公開日 2018年12月07日 | 更新日 2018年12月07日
獨協医科大学心臓・血管内科
24時間365日断らない診療を目指しつつ、研究・教育にも力を入れる
心臓・血管内科では、心臓と血管の疾患全般を幅広く診療しています。診療では24時間365日、いかなるときでも「絶対に断らない」ことを目指し、紹介いただいたすべての患者さんを受け入れる体制です。たとえベッドが空いていなくても、初期治療は当科で施して次の搬送先を含め対応するよう心がけています。
また、診療だけでなく、大学としての研究、教育にも力を入れています。ここ、栃木県でも医師の不足など地域医療の疲弊が叫ばれていますが、地域を支えるよりよい医師の育成と質の高い医療の提供を継続していけるよう、今まで以上に力を入れていきます。
医局情報
診療科 | 循環器内科 |
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専門分野 | 内科学(心臓・血管) |
症例・ 手術数 |
年間CAG 800例、PCI 250例、EPS 80例、ablation 50例、ペースメーカーICD 40例、TTE 3000例、TEE 250例 |
関連病院 |
当院 関連病院 |
専門分野
4チームにわかれて高度な臨床・教育・研究を実施
当教室は心臓・血管疾患の全般を診療しています。そして、虚血性心疾患チーム、心不全チーム、不整脈チーム、CCU(冠疾患集中治療室)チームの4チームにわかれて、高度な医療の提供と研究・教育を実施しています。
虚血性心疾患チーム
循環器疾患のなかでも、循環器の救急や狭心症・急性心筋梗塞といった虚血性心疾患をメインに臨床・教育・研究を行っているチームです。
心臓カテーテル法、冠動脈造影(CAG)や冠動脈インターベンション(PCI)を行っています。技術や設備は全国でもトップクラスです。特に救急患者に対しては24時間365日体制で緊急CAG、緊急PCIに対応しています。私たちは血管内超音波法(IVUS)や光干渉断層法(OCT)、血管内視鏡などを用いて、血管壁の状態を評価しながら、あるいはフローワイヤーやプレシャーワイヤーを用いて冠循環生理機能を評価しながら、質の高い冠動脈検査、質の高いPCI治療を実践しています。
また、閉塞性動脈硬化症など末梢動脈疾患に対するカテーテル治療(EVT)や経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)も積極的に行っています。
本チームでは私の専門分野でもある傷害血管壁の病態についての基礎的・臨床的研究を行っています。また脂肪由来再生細胞(ADRC)を用いた再生医療の研究を進めており、EVTができないような重症虚血肢に対してすでに臨床応用を開始しています。
心不全チーム
心不全チームでは急性・慢性の心不全管理を中心に診療しています。肺血栓塞栓症・肺高血圧症・深部静脈血栓症も当チームで診療しています。心不全に合併することが多い睡眠時無呼吸症候群も睡眠医療センターと連携し診療しています。
循環器疾患において非侵襲的検査の代表であり診断・治療に欠かせない経胸壁心臓超音波検査)を中心に経食道超音波検査、心臓CT、心臓MRI、核医学検査等各種画像モダリティを駆使しています。
また補助循環を必要とするような重症心不全患者に対しては心臓・血管外科、心臓リハビリテーション部門、看護師、臨床工学士と協力しハートチームとして対応しています。
そのほか心不全の非薬物療法として心臓リハビリテーションを積極的に行っており、高齢で運動療法ができない患者や重症心不全患者に対しては後述の和温療法なども取り入れた包括的治療を行っています。
不整脈チーム
不整脈チームは不整脈の診断・治療、失神の原因精査・診断・治療を中心に診療しています。心房租動、発作性上室性頻拍症そして近年増加している心房細動に対するカテーテルアブレーションを行っております。最近では高周波によるアブレーションのみならず、クライバルーンやホットバルーンを用いた心房細動のカテーテル治療も始まりました。また恒久的ペースメーカーや植え込み型除細動器といったディバイス挿入術も積極的に行っています。失神の原因は徐脈性不整脈や神経調節性失神など多岐にわたり、原因特定のため携帯心電計やイベントレコーダー等様々なツールを駆使して診断・治療にあたっています。
CCUチーム
CCUチームは心臓・血管疾患のなかでも集中治療を要する重症患者に対応するチームで救命救急センターと連携して治療にあたっています。当院で2010年より運用されているドクターヘリで、栃木県全域から搬送されてくる多くの重症心臓・血管疾患に対応しています。
心臓リハビリテーション
当院心臓リハビリテーション室は県内では最大規模の設備を有しています。入院・外来での通常の運動リハビリテーションのほか、まだ研究段階ではあるものの、加圧トレーニングを実施しています。また、和温療法という60度の遠赤外線ドライサウナに15分入り深部体温を1℃上昇させた後、タオルで30分保温する新しい治療法も行っており、これらを組み合わせた包括的理学療法として心血管疾患患者さんの治療にあたっています。これらの理学療法の効果を心肺運動負荷試験による運動耐容能にて確認し、また入院中の患者において筋機能評価、筋量の評価を実施し客観的に評価することで質の高い治療を行うとともに、さらなる新規治療法の開発を目指した基礎的・臨床的研究を行っています。
再生医療
2012年4月より大学病院に「再生医療センター」が設置され、井上晃男(心臓・血管内科教授)がセンター長に就任し、再生医療センター運営委員会、認定再生医療等委員会を組織し、特定細胞加工物製造許可申請書の届出・許可申請が受理され、各専門領域(泌尿器科、形成外科、心臓・血管内科)で再生医療が行われております。
我々は再生医療に関する基礎研究とともに、重症虚血肢に対し、脂肪組織由来再生細胞(adipose-derived regenerative cell: ADRC)を用いた血管再生治療を行っております。本治療は名古屋大学を中心とした全国8施設での多施設共同研究として行っておりますが、ADRCは骨髄幹細胞など他の再生細胞に比べ簡便かつ潤沢に細胞採取が可能であり、骨髄幹細胞同等のすぐれた分化能、パラクライン効果を認めることから、その効果が期待されます。この多施設共同研究の成果からADRCを用いた血管再生治療を先進医療としての承認を得ることができれば、従来の治療法では改善が望めない重症虚血肢の患者さんを一人でも多く救うことができると考えております。
研究テーマの一例
現在、臨床研究として冠動脈疾患や心不全、不整脈における様々な臨床試験に参加するとともに、当教室を中心としたグループでも薬剤介入試験などを行っています。
現在行っている研究テーマの一例は次のとおりです。
- 傷害血管における炎症と修復機転
- 不安定プラークの発生機序と病態
- 動脈硬化性疾患の新規病態診断法の開発
- 血管再生治療の臨床応用
- 再生細胞のクウォリティ評価
- 左室拡張障害の新規病態診断法の確立
- 心血管疾患における睡眠呼吸障害
- 肺高血圧症の病態
- 誘導心電図伝送によるST上昇型心筋梗塞の治療効果
- 院外心停止例への目標体温管理療法
- 致死性不整脈の治療と予防
- 温熱刺激による骨格筋肥大効果とその分子機序
- サルコペニアの分子機構の解明とあらたな治療法の開発
研究面では臨床研究に重点をおいて実施していますが、特に力を入れているのは基礎と臨床の架け橋となる研究(トランスレーショナルリサーチ)です。臨床データを取りながら、そこに基礎研究手法を取り入れて、臨床現場における病態解明に活用しています。また本学研究支援センターとの共同研究で心臓・血管疾患に関する基礎研究を進めています。
教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)
1.研修の流れ
虚血性心疾患チームの研修の流れをもとに説明します。そのほかのチームの研修の流れもおおよそ同様です。
入局1~2年目:当教室に入局する際は、基本的に大学院への進学を条件とします。そのため、入局1年目は大学院1年目となります。入局から2年間は大学院生兼後期研修医として、各チームを回りながら循環器内科一般を学びます。学位取得のため、テーマを決め研究も行います。
入局3年目:3年目は大学を離れ、関連病院でさまざまな手技を学びます。週1回は大学に来て研究を続けます。
入局4年目:大学院4年目となるため、研究データをまとめ論文投稿をします。
入局5年目以降:各種専門医・認定医などの資格を取得します。
取得できる資格
循環器専門医、日本心血管インターベンション学会認定医・指導医、内科認定医、内科専門医、超音波専門医、植込み型除細動器植え込み認定、両室ペーシング治療認定、心臓リハビリテーション指導士
2.キャリアパス
キャリアパスはさまざまです。大学に残り研究を続ける医師もいれば、関連病院などで臨床医として腕に磨きをかける医師もいます。
当教室では医局員の個々のキャリアパスに応えるため、まずは循環器内科医に必要なスキルはすべて獲得できるような研修プログラムを組んでいます。そして、専門分野が決まった段階で深く突き詰めることができるような教育体制を敷いています。
3.関連病院
栃木県内を中心に関連病院があります。
- 医療法人中山会 宇都宮記念病院
- 社会医療法人恵生会 黒須病院
- 独立行政法人国立病院機構栃木医療センター
- 医療法人社団誠和会 高野病院
- 一般財団法人とちぎメディカルセンターとちの木病院
- 医療法人昌美会 西村ハートクリニック
- 医療法人貞心会 西山堂慶和病院
- 日本赤十字社 那須赤十字病院
- 医療法人社団福田会 福田記念病院
- 社団医療法人英靜会 森病院
- 友愛記念病院
4.留学
留学した医師は、過去8年間に6名います。
ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院やケース・ウェスタン・リザーブ大学の附属病院であるケースメディカルセンターなどの留学実績があります。
国内では、国立循環器病研究センター、群馬県立心臓血管センター、大阪大学などへ留学しています。
医局の構成
所属医師 | 52名 |
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専門医 | 総合内科専門医 9名
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男女比 | 48:4 |
所属医師の 主な出身大学 |
獨協医科大学、信州大学、東京大学、岩手医科大学、横浜市立大学、日本大学、産業医科大学、帝京大学など |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
9:1 |
2017年8月時点で、当教室に在籍している教室員の人数は関連病院出向者、国内外留学者を含め52名です。そのうち、女性医師は4名います。
当教室に現時点で妊娠や出産などを経験し働いている女性医師はいません。しかし現在在籍中の女性医師4名はみな優秀で、女性ならではの感性で臨床・研究・教育に取り組んでくれており、彼女らの役割は重要だと感じています。
当院には女性医師支援センターがあり、「育児短時間勤務制度」をはじめとした女性医師のキャリア支援のための制度がいくつもあります。当教室ではそれらを活用するとともに、あらゆる面から女性医師をサポートする体制ができています。
教室員の出身大学は9割近くが獨協医科大学ですが、他大学出身者には信州大学、東京大学、岩手医科大学、横浜市立大学、日本大学、産業医科大学、帝京大学などの出身者がいます。大学院には東北大学の出身者が2名在籍しています。
また、茨城キリスト教大学出身の本学看護学部教員(講師)が、大学院生として当教室で研究を行っています。
研修生へのメッセージ
住所:栃木県下都賀郡壬生町北小林880
電話:0282-86-1111
公式HP:http://www.dokkyomed.ac.jp/hosp-m.html
メディカルノートで病院詳細を見るこの医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
獨協医科大学内科学(心臓・血管) 教授
井上 晃男 先生
循環器内科医。動脈硬化の発症や進展、プラーク破綻などの血管の様々な病態を統合した「血管不全」と呼ばれる新概念を提唱。血管不全の病態の解明に向け日夜研究に励んでいる。研究者としての顔だけでなく、教育者としても志高く優秀な循環器内科医を育成し、輩出してきた。「患者さんに幸せになってもらう医療の実現」のために、患者さんやご家族、後進の医師、スタッフなどに真摯に向き合っている。