公開日 2019年01月10日 | 更新日 2019年01月10日

新潟大学

大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野

消化・吸収・代謝に関わる対象臓器をすべて診られる「総合消化器内科医」を育成

当教室は新潟大学医学部第三内科教室を起源に持ち、2017年現在同門会員が480名、大学内で活躍する医局員が40名おり、切磋琢磨しながら日々の診療・研究に励んでいます。消化器内科は食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、胆道、膵臓など専門とする臓器の幅が広く、臓器別に専門を細分化して学ぶ方針の教室が多いのですが、当教室ではそのように臨床・研究チームを細分化せず、以前から消化器内科の対象となる臓器をすべて診られる「総合消化器内科医」の育成に従事してきました。
当教室が総合消化器内科医を育成しているのには大きくわけて2つの理由があります。1つめは、当教室が新潟県全域の医療を支える立場にあるからです。新潟大学医学部消化器内科教室は40の関連病院(総ベッド数12,854床、大学病院を除く)を持ち、様々な患者さんを診なければなりません(大学病院を除く)。医師の数が十分でないなか、多くの患者さんを診なければならない環境ですから、もし関連病院に派遣した医師が「私は消化器の中でも胃しか診られません」というのでは、その地域の患者さんは困ってしまいます。
2つめはどんな境遇に置かれても活躍できる万能な医師を育成するためです。医療の世界は目まぐるしく変化し続けています。当教室の医師が変わりゆく医療の世界の中で生き残り「リーダーたり得る頼れる医師」として活躍し続けることができるよう、消化器のすべての臓器が診られる医師の育成に力を入れています。
当教室には4つの臨床チームがありますが、それぞれのチームに各臓器の専門家を配置し、「肝臓を専門にしている先生でも腸の治療について理解している」といったようにコアとなる知識を全員が持てるような工夫をしています。そもそも消化器はすべての臓器が連動して消化・吸収・代謝を司っていますので、消化器全体を理解していることで、より広がりのある臨床・研究が可能になります。

医局情報

診療科 消化器内科
専門分野 消化器内科学
症例・
手術数
2016年度:上部内視鏡検査 4862件、下部内視鏡検査 1778件、ERCP関連手技 256件、超音波内視鏡 155件、 カプセル内視鏡 61件、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 298件、ラジオ波焼灼術(RFA)10件、腹部血管造影検査・冠動脈塞栓術 153件
関連病院

当院

関連病院

専門分野

2018年、当教室ではミッションとビジョンを刷新しました。

当教室の新しいミッションとビジョン

治せない病気に挑み、診断のつかない病気に取り組む中で、新しい診断、治療法を開発し、人々の未来を変える

医療技術が飛躍的に発展した現代においても、臨床現場では検査をしても診断がつけられない疾患や治せない疾患などに遭遇することが、往々にしてあります。

医学をとおして人類の幸福に貢献するため、一人でも多くの病める人を診ることができる総合消化器内科医の育成による「守」、臨床医と科学者それぞれの立場から何故その疾患が治せないのか現状の問題点を明らかにすると同時に新しい医療を開発するClinician Scientistを育成する「破」、そして国内外から集った医学生や研修医など熱意あふれる人材を育成して全国や世界にリーダーとしてと大きく羽ばかせる「離」。それぞれの実現に向けた思いを、新しいミッションとビジョンに込めました。

Clinician Scientistとは?

Clinician Scientistとは、臨床医であり続け、そのうえ科学者でもある医師のことです。当教室では活躍の場を臨床・研究とわけてしまうのではなく、現場の疑問から基礎研究、基礎研究成果の臨床応用というように臨床、研究はつながっており、そのどちらも行うことによって、よりよい臨床・研究を行える医師になることが大切だと考えています。

疾患啓発も医師の仕事

当教室では臨床・研究だけでなく、「医師が社会に対し何をどのように訴えていくのか」ということを考える訓練として、啓発活動にも従事しています。

たとえばC型肝炎といえば昔は不治の病でしたが、今は特効薬が出て薬さえ飲めば完治するようになりました。しかしそもそも罹患していることに気づかず、治療せずに過ごしている患者さんもまだまだいます。ですからC型肝炎の治療にとって今必要なのは、「研究」ではなく疾患を知り、検査を受けてもらうための「啓発」です。

啓発活動と一言にいっても今の時代、市民公開講座を行うだけでは来てくれる一般の方が少なく十分な啓発とはいえません。そこで私たちは新潟で一番人が集まるとされる「デンカビックスワンスタジアム(旧新潟スタジアム)」にて、Jリーグのサッカーチーム「アルビレックス新潟」に協力を仰ぎ、啓発活動を行いました。

また参加型の啓発活動としてサルコペニア対策ダンス”ゆめダンス”を作成し活動しています。

https://www.niigata-u.ac.jp/news/2017/36002/

先制医学講座の立ち上げ

2018年よりは阿賀野市と、健康寿命延伸・消化器疾患先制医学講座を立ち上げ、あらたにこれからの日本の高齢化社会に対する先制医学を行うことになりました。

https://www.med.niigata-u.ac.jp/in3/about/swanship.html

教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)

1.研修の流れ

リーダーを育てる研修プログラム

医師人口はこれからどんどん増加していくことが予想されています。本当に尊敬される医師になるために、医師は患者さんにとっても、ともに働く医療従事者にとっても「リーダー」でなければなりません。よいリーダーになるためには自身がさまざまな経験をして多様な考え方を持つこと、新しいアイデア考え出し生産性を高めることが重要です。当教室では、よいリーダーを育成するために下記のような工夫をしています。

さまざまなポジションを経験し、「よいリーダーとはなにか」を学ぶ

よいリーダーになるためには、リーダーとして今どんな指示をすべきかを瞬時に判断できることはもちろんのこと、リーダーの下につく医師や従事者が何を思い、どんな環境で働いているか身を以て知る必要があります。

よいリーダーは大学病院内の研修だけでは育ちません。さまざまな規模の病院で、さまざまな立場でものをみて、はじめて気づくことがたくさんあるからです。そのため、当教室では規模の小さい関連病院で部長、医長などトップの経験をしてもらったり、大きな病院でリーダーの下につき現場を経験したりと、さまざまな立場からチーム医療を考える機会を設けています。

2.留学

留学に積極的な医師も多数

当教室は留学に対して意欲的な医師も多く、国内外問わずさまざまな医療機関に留学する医師がいます。また留学を受け入れることもしばしばあります。主な留学連携先は下記のとおりです。

主な留学連携先

  • 東京医科歯科大学難治疾患研究所
  • 国立がんセンター
  • 愛知県立がんセンター
  • Harvard大学ケネディ行政院
  • Edinburgh大学
  • FDA, USA
  • Georgia大学
  • University Medical Center of the Johannes Gutenberg University (Mainz, Germany)
  • London大学
  • Birmingham大学
  • Harvard大学

など

3.関連病院

当教室は新潟県を中心に一部福島県や埼玉県、茨城県に40の関連病院を持っています。主な関連病院は下記のとおりです。

主な関連病院

4.論文・研究実績

当教室では、さまざまな研究を行っています。ここではその一例を3つ挙げて、ご説明いたします。

肝硬変に対する再生医療

以前『メディカルノートの記事』でもお話しましたように、私は長らく患者さんご自身の骨髄細胞を使った肝硬変の再生医療を行ってきました。当教室では2017 年より、今度は日本初の他人の脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた肝硬変治療の治験をロート製薬と協力し行っています。

http://www.med.niigata-u.ac.jp/in3/medical/clinical%20LC.html

現在は肝臓に対する再生医療が中心ですが、今後は食道の再生医療、あるいは炎症性腸疾患の治療にもこれらの技術を役立てたいと考えています。

メダカを使ったJAXAとの共同研究

当教室では外部の企業と協力した研究も行っています。その代表となるのがJAXAとの共同研究で行われているメダカの研究です。当教室で脂肪肝を罹患しているメダカのモデルを作成し、そのメダカを宇宙空間に2か月間介在させるという実験を行いました。

実験の結果、宇宙空間で2か月間飼育されたメダカたちは脳や目、生殖器にはほとんど変化がありませんでしたが、肝臓や腸の遺伝子発現に変化が起こることがわかりました。つまり、生物が宇宙空間に行くことで消化器官に何らかのストレスが起こる可能性が考えられるということです。

宇宙空間に行くとなぜ消化器官に異変が起きるのか、そのメカニズムはまだまだ不明ですが、将来私達が宇宙旅行に行ける時代が来たら、出発の前に胃腸薬を飲むことになるのかもしれません。

内視鏡訓練装置の開発

また、当教室では研修をより実際に近く行うための機器の開発も行っています。近年ですと内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)のシミュレーションをよりリアルに行うための人工物を用いた次世代トレーニングモデル、Endogel」の開発を行いました。

内視鏡的粘膜下層剥離術の練習は、もともと豚の胃を使って行われています。しかし、豚の胃を診るために使われる内視鏡は人に用いる内視鏡ではなく豚用の内視鏡であるため、仕様が異なり、十分な練習とはいえません。また、生体を用いた練習はコストや手間もかかり大変です。

そこで当教室ではもともと携帯電話のボタンなどを作成しているサンアロー株式会社と協力し、合成樹脂「エンドゲル」をつかって人の消化管内を模した装置を作成し、人に対して使う内視鏡で内視鏡的粘膜下層剥離術の練習ができるようにしました。この技術はすでに日本国内だけでなく、イギリスやアメリカにも流通し、若い医師の研修に役立てられています。

年間50本ほどの英語論文を作成

当教室は年間50本ほどの英語論文を出しています。今後は目標として年間70本の英語論文を出すことを目指しています。また数だけでなく、論文の質を高め、患者さんの役に立つ内容にしていくことに注力しています。

後期研修開始後すぐに英語での回診、症例報告を開始

当教室では医師が英語の論文を抵抗なく書くための準備として、後期研修医の段階から回診時に1例だけ英語で症例報告を行うなどの工夫を行っています。関連病院に出向いた際にも先輩医師に教わりながら症例報告を行うことで、早いうちから英語やアカデミックな論理的な考え方に触れられるようにしています。

症例報告とは、医療現場でまだわかっていないことに直結します。そのため、症例報告を書くことを習慣づけておくと、「今の医療でできること、できないこと」がはっきりと分かるようになります。これは研究するうえでもとても大切なことです。

5.学位・専門医の取得

当教室では医学部卒業後、およそ10年程度で専門医資格と学位を取得できるよう指導しています。

当教室で取得できる専門医資格

当教室ではさまざまな専門医資格を取得することができます。その代表例は下記のとおりです。

当教室で取得できる主な専門医資格

  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本肝臓学会 肝臓専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本消化管学会 胃腸科専門医
  • 日本再生医療認定医
  • 肥満症専門医
  • など

大学院

当教室では学位を重要視し、ぜひ所属医師全員に大学院に進んでほしいと考えています。当教室の大学院は2年のベッドフリーを設けており、1年目は、英文の症例報告、臨床研究の開始、2年目から、ベッドフリーで基礎研究の取り組み様々な生物学、医工学を学びます。その期間に世の中のサイエンスを十分に体験することができます。治療方法が確立されていない疾患、診断がまだできない疾患をどのように明らかにしていくかという研究のプロセスや経験は、あとで臨床の現場でも役に立ちます。

6.キャリアパス

医師には大きく分けて3つのキャリアプランが考えられます。

医師のキャリアプラン

  • 基幹病院の医長、部長から院長を目指す
  • 大学病院に勤め、教授を目指す
  • 開業し、地域の患者さんを支える

当教室では医師がどのキャリアを希望してもかなえられるような教育体制を整えたうえ、サポートを行っています。

医局の構成

所属医師 40名
専門医

日本内科学会総合内科専門医 12名
日本消化器病学会専門医 21名
日本消化器内視鏡学会専門医 19名
日本肝臓学会専門医 16名
がん治療認定医 8名
日本再生医療学会認定医、日本肥満学会、日本移植学会、カプセル内視鏡学会認定医など

男女比

39:1

所属医師の
主な出身大学

新潟大学医学部出身者が6割、入局者のほとんどが新潟県出身

同大学出身者と
他大学出身者の比率

6:4

地域を巻き込み、女性も働きやすい環境をつくる

当教室は2017年に12名の後期研修医、2名の中途入局者がおり14名増員しました。現在大学医局は40名の教室員で構成されています。同門会員には女性医師も多くおりますが、現在医局内で活動している女性医師は1名で、今後の増員が期待されています。教室だけでなく新潟県全域、ひいては甲信越地方全域の女性医師が働きやすく、ご自身の能力を遺憾なく発揮できる環境を整えるため、医師会とも協力し、さまざまな取り組みを行っています。

女性医師の声 
https://www.med.niigata-u.ac.jp/in3/about/women.html

多様性を認め、意見をいいやすい環境

当教室は新潟大学医学部出身者が6割程度で、その他の入局者もほとんどが新潟県出身の方です。新潟大学は日本でも有数の歴史ある大学ですが、港町にあるためか学閥のようなものはほとんどなく、多様性に富んだ寛容な性格を持つ大学です。

そのため当教室の雰囲気も非常に明るく、教室員同士がよく話し、意見をいい合いやすい環境にあります。「ダメなことはダメ、よいことはよい」とはっきりいい合える関係性を築くことで、教室全体が活発な雰囲気となり、一丸となって成長できます。

独自のロゴマークを作成

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科分野では、独自のロゴマーク「サンシップ」を作成しました。

テーマカラーはこれから登っていく太陽を彷彿とさせるエルメスオレンジで、モチーフには内科学第ⅢのⅢと、新潟県のある日本海から世界に向けて旅立つヨットを起用しました。

新潟大学地域医療教育センター魚沼基幹病院消化器内科学分野はブルーを基調とした「スノーシップ」、新潟大学医学部健康寿命延伸消化器疾患先制医学講座は白鳥の飛来地として有名な阿賀野市にあることから「スワンシップ」と名付けられた緑色のロゴマークをそれぞれ使用しています。

また、

  • Communication
  • Collaboration
  • Creation

による3つのCをモチーフにしたロゴも作成しました。

所属医師のインタビュー

研修生へのメッセージ

新潟で一番ではなく、全国で、世界で一番を目指す

医局は臨床、研究、啓発など、さまざまなステージがあります。1人ですべてのことをやろうとすると不可能に感じられますが、たくさんの同士が切磋琢磨することで、全員の知識が蓄積され、1つの大きな山ができます。私は当教室を「新潟で1番の山」ではなく、全国で、世界で1番の山にしていきたいと思っています。
世界で一番の山を目指すために、当教室では「守破離」という言葉を大切にしています。守破離とはもともと剣道や茶道などの修業における段階を表す言葉です。これを我々の目標に置き換えると、「守」は今ある医療の「型」をしっかり学ぶこと、「破」はそれを破って新しい概念を自ら作ること、「離」はいずれ当教室を離れ、医師一人ひとりがリーダーとなって各地で活躍することです。世界一の消化器内科教室を目指して、ともに学びませんか。

新潟大学の情報

住所:新潟県新潟市中央区旭町通1番町754

電話:025-223-6161

公式HP:http://www.nuh.niigata-u.ac.jp/

メディカルノートで病院詳細を見る

この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野 教授 新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部 部長 栄養管理部 部長 肝疾患相談センター センター長

寺井 崇二 先生

非代償性肝硬変に対する自己骨髄細胞投与療法を開発世界で初めて実施(2003年11月) また現在、他家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた治療法の国内初の治験を開始 メダカ非アルコール性脂肪肝炎モデルの開発 治せない病気、診断のつかない病気に取り組んでいます。