公開日 2025年06月03日 | 更新日 2025年06月03日

杏林大学

消化器内科学教室

手技・研究・キャリアの先にある、「自分らしい医師像」の実現へ

当研究室は西東京エリアにおける基幹病院として、消化管疾患・胆膵疾患・肝疾患の幅広い診療を行っています。特に炎症性腸疾患(IBD)に関しては、地域で専門的な診療を提供する数少ない施設の一つであり、豊富な症例と高度な治療技術を学ぶことができます。
特色は内視鏡診療の最前線に立ちながらも、臨床だけでなく研究活動に力を入れている点です。国際共同治験への参加や、消化器内科領域の新規治療法の開発など、学問的な探究心を持った医師が活躍できる環境が整っています。また、内視鏡技術の向上に力を注ぎ、大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を年間200件以上実施するなど、専門的なスキルを磨く場も数多く提供されています。

医局情報

診療科 消化器内科
専門分野 消化器内科学(上・下部消化管疾患、小腸疾患、炎症性腸疾患、肝臓疾患、胆道・膵疾患など)
症例・
手術数
詳細は下記をご覧ください。
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症例・手術数

2023年度

1. 診療実績

・外来患者総数:32,899名

 上部消化管・下部消化管疾患、小腸疾患、肝・胆道疾患、膵疾患などの専門外来を設け、特殊疾患に対し、より専門性をもって診療を行っています。

炎症性腸疾患包括医療センターも設立しており (外来患者数;クローン病; 260名、潰瘍性大腸炎; 689名) 、手術、妊娠・出産、小児患者さんにも対応できるようにセンターには外科、産婦人科、小児科・小児外科も参加しています。東京都西部唯一の専門基幹施設として分子標的治療などの先進治療や新薬の治験も行っています。(https://kyorin-icibd.com/)

・入院新規患者総数  1946名

2. 各種検査・治療成績

上部消化管内視鏡 6088件、下部消化管内視鏡 3965件、 ERCP 478件、 超音波内視鏡 405件、 ダブルバルーン小腸内視鏡 130件、小腸カプセル内視鏡 62件、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)191件 (食道25件、胃62件、大腸104件)、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST) 172件、胆道ドレナージ(ステント挿入を含む) 385件、超音波内視鏡下穿刺生検(FNA) 90件、クローン病の腸管狭窄に対するバルーン小腸内視鏡下拡張術 30件、ラジオ波焼灼術(RFA) 30件、肝動脈化学塞栓術(TACE)19例

 

グループ別の特徴について

当研究室では、消化器内科を専門とする医師が「肝臓」「小腸大腸」「消化管治療」「胆膵」「ヘリコバクター」の5つのグループに分かれており、それぞれの専門性を活かした診療と研究に取り組んでいます。


肝臓グループの特徴

肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法や血管内治療をはじめ、自己免疫性肝疾患やB型・C型肝炎など、肝疾患全般の診療に対応しています。特に、超音波を活用した画像診断のスキル習得にも注力しており、診断力と治療技術の両面を磨くことができます。

小腸大腸グループの特徴

IBD(炎症性腸疾患)や大腸癌を中心に下部消化管疾患を診療しております。特に炎症性腸疾患登録患者数は約1450名と全国の施設からご紹介をいただいており、国際共同治験の実績も豊富です。炎症性腸疾患包括医療センターを開設しチーム医療の推進や地域での啓発活動も行っています。また、小腸カプセル内視鏡や小腸バルーン内視鏡を用いた検査・治療を行っており、特に小腸バルーン内視鏡は東京西部で有数の実施施設です。

消化管治療グループの特徴

大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を中心とした消化管腫瘍に対する内視鏡治療に強みがあり、年間200件以上の内視鏡手術の実績を誇ります。緊急内視鏡治療も積極的に行っており、豊富な実績と充実した指導体制のもと、内視鏡治療を幅広く学べます。

胆膵治療グループの特徴

胆膵グループでは、胆道結石、胆管炎、膵炎、膵胆管癌など多岐にわたる疾患に対して、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)などの高度な内視鏡治療を行っています。胆膵疾患は急性疾患が多く、チームとしての迅速な対応が求められる分野であり、診断・治療技術を実践的に習得できる環境が整っています。

ヘリコバクター班の特徴

難治性ピロリ菌感染症に対し、薬剤感受性試験に基づいた個別化治療を実施しています。ペニシリンアレルギー症例への除菌治療経験も豊富です。除菌難治例の治療は、日本では屈指であり、高い除菌率を得ています。

教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)

1.カリキュラム

初期研修では、消化器疾患に関する基本的な診療技術や内視鏡検査の基礎を身につけ、後期研修では、消化管・肝胆膵の3領域に分かれて、それぞれの専門性を深めていきます。

一方で、自ら課題を見つけ、論理的に考え抜き、社会に向けて発信する力を養うことも重視しています。具体的には、学会発表や論文執筆に積極的に取り組む機会が設けられており、プレゼンテーション力や論理的思考力といったアウトプットのスキルを培うことができます。

このように、医師としての個性を尊重し、それを強みとしてキャリアを形成することが重要であるという共通認識のもと、多様な視点やスキルを持った人材が集っています。

学会・研究会の報告はこちら:http://kyorin-gastro.com/student/conference.html

 

2.キャリアパス

研修修了後は、大学病院での診療・研究を継続するほかにも関連病院での臨床経験を重ねることや、開業を目指すことなど、医局の枠にとらわれない自由度の高いキャリア支援が行われています。これまでには、腸管超音波検査の専門性を高めるための海外留学に加え、国立がんセンター、公立昭和病院、稲荷町の地域密着型病院、聖路加国際病院など、さまざまな医療機関への出向・研修の実績があります。

このように「やりたいことが見つかれば、どんどん実現できる」スタンスが貫かれているので、個々の目標や関心に応じた柔軟なキャリア設計が可能です。

 

3.研究環境

当研究室では、国際共同治験への参加や新規治療法の開発に積極的に取り組んでおり、特に消化管疾患の診断・治療技術の向上を目指した内視鏡技術の研究に注力しています。また、若手医師にも学会発表や論文執筆の機会が豊富に用意されており、臨床と研究を両立するスキルを実践的に磨くことができます。

研究テーマとしては、「腸管微生物叢」や「消化管免疫」など、近年注目される領域に重点を置きつつも、個々の関心に応じて柔軟にテーマを設定することが可能です。特定の疾患や領域に閉じることなく、「将来的に新たな課題に出会ったときにも対応できる力を育てる」という考え方のもと、応用力・問題解決力を養うことが重視されています。

さらに、研究の過程では、自分の専門外の領域に触れる機会や、他の診療科と連携するプロジェクトに関わる場面も多く、多角的な視点やチームでの協働力が自然と身につきます。こうした経験を通じて培われる論理的思考力や柔軟な適応力は、臨床現場においても大きな力となります。

実施中の研究についてはこちら:http://kyorin-gastro.com/patient/clinical.html

治験のご案内はこちら:http://kyorin-gastro.com/patient/chiken.html

 

4.論文

当科は炎症性腸疾患に関する国際共同治験に積極的に参加し、久松理一教授は本邦の代表者として数々の論文の共著者に名を連ねています(N Engl J Med. 2019;381:1201-1214. Lancet. 2022;399:2015-30. Lancet. 2022;399:2031-46. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2023;S2468-1253(23)00318-7. JAMA. 2024;332:881-897.)。

臨床においては、炎症性腸疾患の低侵襲な検査法の一つである腸管超音波検査の、本邦における指導的な施設として活躍しています(J Gastroenterol. 2024;59(3):209-215. Gastro Hep Adv. 2024;3(6):703-710. J Gastroenterol. 2025;60(2):166-173.)。

また、内視鏡画像評価における色覚の影響についての報告(DEN Open. 2024;5(1):e410.)や3D-CTを用いた内視鏡治療の報告(BMC Gastroenterol. 2020;20(1):158.)など各専門チーム独自の研究報告を積極的に行っています。

さらに、ヒト・マウスにおける腸内微生物叢や免疫を対象とした基礎研究やトランスレーショナル研究でも、その成果を近年報告しています(Sci Rep. 2023;13(1):12241. NPJ Biofilms Microbiomes. 2024;10(1):81.)。

現在は産婦人科学教室、小児科学教室と共同で実施した母子における縦断的細菌叢研究を国際英文誌に投稿中です。

 

医局の構成

所属医師 2024年度 51名(教授:1名、臨床教授:1名、准教授:2名、講師:3名、助教:4名、医員:24名、専攻医:14名、大学院:2名)
専門医

・指導医
日本内科学会指導医:20名
日本消化器病学会指導医 : 6名
日本消化器内視鏡学会指導医: 7名
日本肝臓学会指導医: 1名
日本胆道学会認定指導医:1名
日本膵臓学会認定指導医:1名
日本カプセル内視鏡学会指導医 : 1名
日本炎症性腸疾患学会指導医 :5名

・専門医
日本内科学会総合内科専門医 : 7名
日本消化器病学会専門医:19名
日本消化器内視鏡学会専門医:20名
日本肝臓学会専門医:8名
日本カプセル内視鏡学会認定医:2名
がん治療認定医 : 1名
米国ECFMG Certification:1名
International Bowel Ultrasonography Curriculum Certification:1名 など

男女比

男性:35名、女性:16名

所属医師の
主な出身大学

杏林大学:33名/岩手医科大学:2名/金沢大学:1名/金沢医科大学:1名/川崎医科大学:2名/北里大学:2名/慶応義塾大学:2名/神戸大学:1名/高知大学:1名/札幌医科大学:1名/帝京大学:3名/東京女子医科大学:1名/長崎大学:1名

同大学出身者と
他大学出身者の比率

同大学出身者:33名、他大学出身者:18名

フラットでオープンなコミュニケーション

当研究室では、教授や上級医と若手医師との距離が近く、日常的に意見交換ができるフラットでオープンなコミュニケーション文化が根付いています。卒業大学も問わず、診療・教育・研究への積極的な姿勢が評価されており、専門性を高めて将来的に開業を目指す医師も多く在籍しています。臨床現場は忙しさを伴う一方で、医局全体で業務を分担し、支え合う文化が確立されていることも大きな特長です。

子育てとキャリアの両立にも積極的に対応しており、女性医師の割合が比較的高いだけでなく、男性医師の育児休暇取得にも柔軟な体制を整えています。これまでに5名の男性医師が育休を取得しており、外勤勤務の併用によって収入や実務経験を維持できる工夫もされています。たとえば、週1~2回の外勤勤務を許可することで、育休中であっても内視鏡診療などの実践機会を確保できるよう配慮されています。

さらに、急な体調不良や家庭の事情による休みが発生した場合でも、医局内でフォローし合える体制が整っており、業務が滞らないように調整できるだけの人的な余力とマネジメントが確保されています。こうした仕組みのもと、各医師が安心して臨床・研究・生活に取り組める環境が築かれています。

 

研修生へのメッセージ

研修生へのメッセージ

当研究室では、内視鏡などの技術習得に加えて、患者を総合的に診る力や、臨床と研究の両面に取り組む姿勢を育むことを大切にしています。地域の中核病院として多様な症例に対応しつつ、大学病院としての教育・研究活動にも力を入れており、将来の進路や目標に応じた柔軟なキャリア形成が可能です。
医局内の雰囲気も、年次や出身に関係なく相談しやすく、互いに支え合いながら前向きに働けるあたたかさにあふれています。日々忙しい中でも、チーム全体で声をかけ合い、明るく活気のある空気の中で臨床・研究に取り組めるのは、この医局ならではの魅力です。

出身大学に関わらず、やりたいことを明確に持った方にとって、ここは挑戦できる場です。手技や知識を深めながら、多様な経験を通じて視野を広げたいと考えている方は、ぜひ一度見学にお越しください。

杏林大学の情報

住所:東京都三鷹市新川6-20-2

電話:0422-47-5511

公式HP:https://www.kyorin-u.ac.jp/hospital/clinic/inter06/

この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生

杏林大学医学部消化器内科学教室 教授

久松 理一 先生

炎症性腸疾患(IBD)を専門とし、潰瘍性大腸炎やクローン病の病態解明、治療法開発に取り組んでおります。また、若手医師の指導や消化器内科の運営にも積極的に携わり、診療・教育・研究の発展に寄与しています。また、2022年4月から開設されている杏林大学医学部付属病院 炎症性腸疾患包括医療センター(ICIBD)のセンター長も務めています。

<ご取材にご協力いただいた先生方>
准教授 三好 潤 先生・助教 森久保 拓 先生・助教 小栗 典明 先生・医員 藤麻 武志 先生