

公開日 2018年11月05日 | 更新日 2018年11月05日
新潟大学
2015年より新潟大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野の教授を拝命した堀井新です。それまでは、大阪大学およびその関連施設で勤務しておりました。
2年前に教授となってから、教室全体のあらゆること、留学先から教育体制に至るまでを改革してきました。毎年平均4名の入局者を迎えていますが、今後はさらに入局を増やし、当教室とともに成長し、発展していく若手の先生方に来ていただきたいと考えています。
当教室は開講107年の長い歴史がある教室ですが、若手にとっては新教授就任直後の医局ならではのチャンスが多く潜んでいます。
新しい治療法や手術法、最新情報を次々と取り入れて実践するのも当教室の特徴です。教育体制は大学病院という大型施設のメリットを活かして、若手の先生方に将来大きく羽ばたいてもらうための教育体制・研修コースをしっかりと構築しており、耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学の面白さを実感できるような研修を行っています。
地域の患者さんに満足いただける診療を提供すること。そして多くの意欲ある医師とともに、世界の耳鼻咽喉科医療の発展のために歩み続けること。このふたつが、新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教室の最大の目標です。
診療科 | 耳鼻咽喉科 |
---|---|
専門分野 | 耳鼻咽喉科・頭頸部外科全領域 |
症例・ 手術数 |
年間手術数988件(2017年度) |
関連病院 |
|
新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科は、その名の通り耳鼻咽喉科・頭頸部外科すべての領域の診療を担う医局であり、全領域において時代の最先端の標準治療を提供しています。
医学は日進月歩であり、耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域における治療法も常に進化し続けています。スタンダードとなる治療は、どんどん新しい手法に置き換わっています。しかし一部の施設では、いまだに20年前のスタンダード治療を行い続けている現状があります。
これに対して当教室では、常に最新情報をとらえて治療法のアップデートを重ね、そのときのガイドラインに則った標準治療を行うことを理念に掲げています。
たとえば、頭頸部がんは標準治療の概念が変化してきている疾患の一つです。
下咽頭進行癌の場合、かつては喉頭をごっそり摘出する方法が標準治療として用いられていました。しかしこの場合、たとえがんが治っても、発声や嚥下など患者さんのその後の生活に支障をきたすおそれがあります。
そこで機能温存を主軸に置いた治療が目指されるようになり、現在では摘出手術から放射線と化学療法の併用療法へと方法が転換してきています。この他、鼻の手術や中耳の手術も内視鏡下手術が主流となりつつあります。
時代の流れに伴って、常にそのとき最善の治療を提供すること。これが、我々の目指す医療の在り方だと考えます。
手術数はその病院の診療科を評価するための基本の指標です。
私は、耳鼻咽喉科医にとって大事なことは「個」よりも「チーム」「継承」、「個人の手技のレベル」より「医療の水準」「統計的な有意差」だと考えていますが、手術手技・手術件数も重要な要素です。研修医の皆さんが必要な手術手技を学べるよう、十分な数の手術を積極的に行っています。
私が新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の教授に就任してから2017年4月で2年が経過しますが、2015年以前と比べて手術数が1.4倍に増加しました。現在の年間手術数は1000件に迫る勢いで、特に耳科手術の件数は全国でもトップクラスです。
これほど手術数が増えた理由としては、医局員の勤務体系を変更し、無駄を省き、有効に時間を使えるような仕組みを構築したことが大きいと考えています。
外科医の中には周囲から「ゴッドハンド(神の手)」と呼ばれる手技をお持ちの方がいます。しかし、ほとんどの手術は特別の器用さなどは不要です。やる気と根気と丁寧な指導があれば、誰でも手技は覚えられます。逆にゴッドハンドにしかできない手術には普遍性や継続性がなく、一代限りとなります。この点が大きな課題といえます。
当教室は手術を一人のゴッドハンドの医師に依存するのではなく、みんなで手術を共有し、みんなで技術を高めていくことが重要だと考えています。もちろん手術指導は丁寧に、しかし厳しく行っています。けれども、上記のような考え方から、ある手術をあるドクターが独占するようなことはなく、早い時点から若い先生にいろいろな手術を経験してもらおうと考えています。
当医局に入局後は、若い頃から多くの手術を経験します。新潟県は北西に400㎞以上伸びている地理的な特性上、県内の移動といっても患者さんには大きな負担がかかります。患者さんのことを考えると、ひとつの病院であらゆる疾患を治療する使命があるのです。
当教室では入局者全員の技術向上を目指し、若手の方にも多くの手術を行っていただきます。
なお耳科手術は顕微鏡あるいは内視鏡下の精緻な作業を要することが多いため、細かい作業を要する手術に興味があるという方は、特に向いているといえます。一方、長時間かけて大きな手術をこなしていきたいという方には、頭頸部腫瘍のような領域が向いていると思います。器械が好きな先生は、ナビゲーションやデバイスの進歩が著しい鼻科手術が向いているかもしれません。多様な手術があるのも耳鼻咽喉科の特徴と言えます。
画像引用:新潟大学耳鼻咽喉科
新潟大学では研修医の希望に合わせた4年間の研修プログラムを3種類(大学院進学コース、臨床・大学コース、臨床・地域コース)用意しています。いずれも入局5年後(卒後7年目)に専門医を取得します。
先に述べたように、若手でも積極的に手術を任せ、また病院の症例数も豊富ですから、本人の努力さえあればスムーズに専門医を取得できる環境です。専門医取得後には各自のサブスペシャリティーを選択し、新潟大学病院や関連病院でさらに研修を受けます。
この時期は、最も集中的に一般診療や手術を経験してもらう期間といえます。大学院に進むタイミングは人それぞれで、専門医取得前・後どちらでも構いません。
大学院進学コースの場合は4年目に大学院に入学し、基礎研究や臨床研究を行いながら引き続き新潟大学病院で研修を受けます。
キャリアパスの詳細 大学院進学コースの例
1年目:新潟大学病院で研修を行う
2~3年目:新潟市民病院、新潟県立がんセンター新潟病院、済生会第2病院、新潟大学地域医療研究センター・魚沼基幹病院、長岡赤十字病院、立川総合病院、新潟県立中央病院、新潟県立新発田病院のうちいずれかの病院で研修を行う
4年目:新潟大学病院で研修を行いつつ、大学院へ入学し研究を進める
(以上、新潟大学耳鼻咽喉科より引用)
このように、本人の希望に応じて様々なキャリアプランが設けられており、研修コース修了後も幅広い分野で活躍することができます。
たとえば医療の三本柱(教室・臨床・研究)のうち教育に深く携わりたいという方の場合は、10年目を目安に病院から大学に戻り、耳鼻咽喉科・頭頸部外科でキャリアを積んでいきます。
2015年の教授の交代に伴い、現在は留学先を一新している最中です。新しい留学先の候補としては、私が留学していたニュージーランドを検討しています。2016年には現地の先生を当院に招き、特別講演を兼ねて英語でセッションを行い緊密な関係を保っています。
新潟県内における一定規模の病院はほぼすべて関連病院です。このため、若手医師一人一人が確実に、しっかりと臨床経験を積むことができます。
また、頭頸部腫瘍の治療に関しては癌研有明病院と密にコンタクトをとっており、常に一名当局から人を派遣しています。
関連病院一覧http://www.med.niigata-u.ac.jp/oto/related-hospital/
大学は研究ありきの教育機関であり、医療は教育・研究・診療の三本柱で成り立ちます。ですから、医局をより太く大きく成長させるために、研究活動にも力を入れる必要があります。
当局は、『Nature』や『Science』などに多数の論文を発表している新潟大学脳研究所と連携しています。新潟大学脳研究所は、日本ではじめて脳神経に関する国立大学附置研究所として設置されました。現在は研究所内に3部門7分野、2研究センター12分野が設けられており、大学院生にはこの脳研究所のシステム脳生理学や分子神経生物学、および学内の基礎医学教室(分子生理学、神経解剖学、実験病理学)で研究に打ち込んでいます。研究内容はニューロサイエンスからオンコロジーまで、耳鼻咽喉科における将来の自分の専門領域での応用も見据えた幅広い研究分野が選択可能となっています。
各研究所
学内の基礎医学教室
難聴めまいグループ、鼻咽喉グループ、腫瘍グループの3つに分かれて研究を行います。とくに難聴めまいグループの研究は、私がBarany学会の心因性めまい国際診断基準作成委員を務めている関係で、世界レベル的な研究に関わることができます。
難聴めまいグループ
鼻咽喉グループ
腫瘍グループ
収入面に関しても2年前(2015年)から大きく改善いたしました。大学病院からの給与にプラスして、週2回の外勤、月複数回の関連病院での日当直、市の急患センターにおける外来勤務斡旋などを充実させつつ無理のない勤務形態を実現し、従前に比べ当教室の医師は大幅増の手取り収入となっています。このような待遇改善により、以前と比べて大学で研修したり、医員として帰学したり、大学院へ進学を希望する医師が激増しています。
所属医師 | 48名 |
---|---|
専門医 | 37名 |
男女比 | 37 : 11 |
所属医師の 主な出身大学 |
新潟大学 |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
30:18 |
2017年現在の新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教室の在局者は48名、うち女性医師が11名在籍しています。
耳鼻咽喉科は他の診療科と比べても女性医師が働きやすく、出産や育児と両立しやすい診療科であることをご存じでしょうか。
2017年現在、新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教室には5名の女性医師が在籍しています。子育て中の医師4名中3名はフルタイム、1名はパートで勤務しています。フルタイムの3名のうち1名は3人の、もう1名は双子の子どもを育てるお母さんです。彼女たちはもちろん手術や専門外来も担当しますし、このうち1名は講師であり医局幹部として後進の指導や専門領域の学会における重要な仕事にも携わっています。このように、当教室は女性がライフイベントの後でも復帰し、中心メンバーとして活躍できるような環境が整っており、実績もあります。
当局だけではなく、耳鼻咽喉科は総じて女性医師の活躍を支援する診療科です。
日本耳鼻咽喉科学会では男女共同参画の取り組みを積極的に推進し、女性医師のキャリアアップを学会単位で考えています。実際に、新潟大学医学部における女性の割合は3割にのぼります。もはや耳鼻咽喉科は、女性医師のいない運営が考えられない診療科なのです。
参考リンク:日本耳鼻咽喉科学会http://www.jibika.or.jp/members/sankaku/index.html
この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授
堀井 新 先生
大阪逓信病院、大阪大学医学部耳鼻咽喉科学教室、ニュージーランド・オタゴ大学を経て現在は新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野で教授を務める。めまい診療における本邦のトップランナーとして広く知られている。