公開日 2018年11月27日 | 更新日 2018年11月27日
東京医科大学腎臓内科教室
2013年設立、現在急成長を遂げている教室
東京医科大学は100年続く歴史ある大学で、100年間の歴史と伝統があります。一方で腎臓内科教室は2013年に講座に昇格した若い教室です。2017年3月現在、少人数の教室ながらも、日々の診療に励み、充実した研修と、男女を問わず医師が働きやすい環境を提供しています。
腎臓内科教室は教室が開局して6年目であることから、今まさに教室としての体裁をつくっている段階です。研究テーマや診療・研修のシステムをゼロからつくっていくというある種貴重な機会に立ち会ってみたい、ともに教室をつくっていきたいという意欲ある医師を歓迎しています。
東京医科大学の腎臓内科教室は新しい教室であるにもかかわらず、他大学の腎臓内科教室や、外部の病院、診療所などから高く評価されており、患者数も増加しています。毎年3名ほどの医師が入局を希望してくださいます。現在は教授以下15名程度が本院に在籍しています。
医局情報
診療科 | 腎臓内科 |
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専門分野 | 腎臓内科学 |
症例・ 手術数 |
2017年度 外来受診者11662名、入院患者280名、腎生検件数約50件、内シャント作成術 約70件、長期留置カテーテル挿入約20件 |
関連病院 |
当院 関連病院 |
東京医科大学腎臓内科教室の教育方針
当教室では下記の3つのことを意識した教育方針を定めています。
考える内科医
内科診療の基礎である「臓器や身体に何が起きているのか」を考えることができる内科医を育てます。腎臓は画像診断がなく、治療効果が目に見えて現れないことも多いため、この力は非常に重要になります。
情報を発信する内科医
学会や論文の情報を受けるだけではなく、発信することができる医師、それにより正しい情報を取捨選択できる医師を育てます。
組織を支える内科医
医療機関の中心として、チーム医療のリーダーとして、「ルールを遵守し、他人に迷惑をかけない」チームを作ることができる医師を育てます。
このような3つの教育方針の元に、日々の臨床に当たっています。
教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)
1.病院の主戦力となるのは6年目以降。研修は屈指の病院でトレーニング
当教室の研修は本学のみならず都内の腎臓内科の教室の中でも、最もよいトレーニングが受けられる環境であると自負しています。ここで一般的な入局後の研修の流れをご説明します。
1〜2年目:東京医科大学内で病棟の入院患者さんを受け持つ
最初の1〜2年は当院で先輩の指導を受けながら、チームで病棟の入院患者さんを受け持ちます。入局後1〜2年は先輩医師の指導を受けながら患者さんを診療します。また他科からの依頼診療が多いのが東京医科大学病院の特徴かもしれませんが、チーム当たり20例程度を担当しますので、固有床が少なくても十分な経験を積むことができます。特に他科の診療と腎臓のバランスを考えながら管理していくことは非常に力が付きます。また、透析の担当期間はPD診療を行うとともに、入院HDPのHDを担当することで、他の診療を客観視するトレーニングになります。
ご存じのとおり腎臓疾患は慢性疾患であることが多く、治療をしても完治が望めず、一生付き合って行くものが多いです。しかし他の疾患の治療中に突然腎臓が悪くなった方の場合、医師が専門的知見をもってしっかりと原因を探れば、きちんと答えがわかり、対処することができる場合も多いため、この経験は腎臓内科医、将来総合内科医を目指す方には非常に勉強になることでしょう。
また、ホームページにも記載されていますが、当科の教育方針の1つに「情報を発信し、情報の扱いが上手な内科医」というものがあり、この2年間の間に何か1つでも自身の論文などが出版物に掲載されることを目標にしています。出版物に自分の名前が載ることで、外部の病院に行った際にも自身の取り組みを示すことができます。同時に普段応援してくれている家族にもわかりやすい自分の努力の証として、非常に喜んでもらえます。
3〜5年目:外部の病院でのトレーニング
当教室はまだ新しいため、他の大学で人事派遣をしているような直接の関連病院は本院の他は東京警察病院のみです。現在は私の出身大学である慶應義塾大学の関連病院と提携して、若手医師の派遣を行っています。逆に言えば○○病院に何名派遣しなくてはいけないということもないので、しがらみなく、本人に合わせた研修の受けられる病院を選んで出張できることも、当教室のメリットです。済生会中央病院や日本赤十字社医療センターなど東京の名門病院はもちろんですが、地方に行きたいという希望があれば、北海道から沖縄まで、さまざまな地域の病院を紹介することができます。
近年は若手医師の少ない現場も多く、そのような病院では40〜50代の知識や経験が豊富なベテランの先生が多数活躍しています。指導したくて手ぐすねを引いている彼らの元でしっかりとトレーニングを受け、現場の厳しさや難しさ、そして臨床の楽しさを経験して、2〜3年後に皆たくましくなって教室に帰ってくることを期待しています。
6年目〜:腎臓内科教室の中心となって診療に従事
外部の病院での研修から戻ると、いよいよ当病院で主戦力となって活躍していただきます。腎臓内科で受け持つ患者さんはもちろん、他科から紹介された患者さんの診療にもチームのリーダーとして率先して当たるうえ、学生を含めた後進の指導もしていただきます。
外部の病院に研修に行っている若手医師の第1期生が、2017年4月に戻ってきました。しっかりと研修を受けた彼らによって院内の研修環境も格段に向上しているのを感じています。
2.専門医・学位・留学
専門医の取得は全員に。留学や学位は本人の希望と実績に応じて支援
前述のとおり在籍している医師が皆若く、専門医や学位の取得は現在進行中です。教室の方針として、内科、腎臓、透析の専門医資格は全員に、そのほかにも自分の興味に合わせて私のようになるべくたくさんの資格を取得してもらうつもりです。妊娠や出産を考えている女性医師には、産休や育休のタイミングで専門医の資格を取得することもよいと思います。
学位についてはあまり役に立たないという認識をしている方もいるようですが、研究をした証拠として取得を勧めています。研究は直接臨床に役立つことは少ないかもしれませんが、診療の際に不思議に思ったことから仮説を立てて、それを証明するための研究をデザインし、論文を読んでこれまでの知見と比較して論文として自分たちの考えを公表するというプロセスは、臨床医とくに最初に申し上げた「考える内科医」として必須と考えています。せっかく大学に入局したのですから、よほど嫌な人を除いて研究者としてのトレーニングも受けてもらいます。
また希望している場合には、研究者としての国内外への留学サポートも行います。今は昔と比べて日本と海外の医療技術の差があまりありません。むしろ語学のハンディキャップがある分、海外留学をしたほうが仕事の遅れをとる印象があるため、留学を希望する医師自体が減っています。しかし慌ただしい臨床医の生活から離れられる機会はまずありませんので、単に海外生活を体験したいというのでもよいので留学は勧めています。
3.キャリアパス(研究環境)
研究の始動に立ち会うチャンス。2023年を目標にオリジナルの論文を作成
本来であれば入局から6年目以降には、基礎研究にも取り組めるような環境を作りたいと思っています。今のところは人手不足で本格的な基礎研究活動の始動は準備中ですが、在籍する医師が基礎研究に興味・関心を持てるような指導を行っています。目標としては教室発足から10年を目処に、外部研究者の力を借りない当教室オリジナルの基礎研究論文が発表できるような研究体制を構築しているところです。
当教室の基礎研究はゼロからのスタートとなりますので、研究用の器具などもこれから揃えていかなければなりません。しかし、研究の立ち上げに携わるという貴重な経験をすることができます。研究する医師たちがスムーズに取り組めるようにサポートしていきたいと考えています。
将来的に研究活動を確立するために、現在外部の基礎研究室に3名ほど医師を派遣し、養成しています。彼らが当教室に戻ってきたら、彼らを中心に研究環境の準備・立ち上げをしたいと思っています。
医局の構成
所属医師 | 25名 男13名 女12名 |
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専門医 | 11名 |
男女比 | 5 : 5 |
所属医師の 主な出身大学 |
東京医科大学、慶應義塾大学、東京女子医科大学、東海大学、帝京大学、北里大学、三重大学 |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
19 : 6 |
出身大学と男女比
既婚者も多く、家庭と仕事の両立ができる環境
当教室の医師は平均年齢が30代前半と若く、半数以上を女性が占めています。また、既婚率も8割程度と非常に高いため、男女を問わず家庭を持つ医師が働きやすい環境を構築するよう努めています。教室員同士もそれぞれの世代が助け合うことで家庭を重んじる時期、仕事に集中する時期を使い分けることができるように、協力しています。
在籍する医師の出身大学は東京医科大学ばかりではありません。私自身も慶應義塾大学の出身ですし、他にも関東圏内の私立大学から、また大分大学、三重大学など全国各地からも入局しています。
研修生へのメッセージ
この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
東京医科大学腎臓内科主任教授
菅野 義彦 先生
1991年慶應義塾大学医学部を卒業後、埼玉医科大学腎臓内科、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て、2013年より東京医科大学病院腎臓内科主任教授。「患者さんが尿検査の結果をみて病院に来るにはどうすればよいのか」という観点から様々な研究を進めており、慢性腎臓病患者を一人でも多く救うために尽力している。患者さんだけではなく、周囲の方にも安心してもらえる診療を目指す。