公開日 2018年12月14日 | 更新日 2018年12月14日
大阪大学大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学
臨床医として・研究者として有益な経験を積むことができる
近年、循環器学を修めたあとの選択肢は以前よりも広がりました。ある時期まで当教室では「病棟で臨床を経験してから大学院で研究」という流れが一般的でしたが、今では臨床医としてのキャリアを形成したい、基礎研究に没頭したいといった本人の希望に沿う形で、道を選択できます。
大阪大学医学部附属病院の循環器内科には重症の患者さんが多くいらっしゃるため、臨床医としての有益な経験を積めるでしょう。一方、当教室は世界トップレベルの研究を行っており、志の高い仲間たちと切磋琢磨しながら研究に没頭したいという方にも最適な環境です。
医局情報
診療科 | 循環器内科 |
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専門分野 | 循環器内科学 |
症例・ 手術数 |
心不全精査入院(うち転院)281例(45例) 、冠動脈形成術275件、 アブレーション・電気生理学的検査、 デバイス植え込み125件、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)143例、成人先天性心疾患(外来/入院)172/53例 |
関連病院 |
当院 関連病院 |
臨床
当科では、診療の目標を「心不全・突然死を治療し、予防する」としています。心臓のポンプ機能を規定しているのは、冠動脈、刺激伝導系、弁などの構造、そして心筋です。それぞれのパーツへの治療は、心臓ポンプ機能低下を予防、改善するためのものです。パーツへの治療専門性を維持しながら、心臓そして全身を診る1つのチームとして臨床を行なっています。
これからの医師は、患者さんに「触れる」診療行為が中心になります。診断能としては、問診など患者さんとのコミュニケーション能力、心エコー技術、治療は虚血、不整脈、SHDを含む多くの手技について、デバイスの進化により1人の医師が複数の手技を身につける時代がくると考えています。その上で、全身状態、そして患者さんの人生を理解しながら治療を進めるgeneral cardiologistを育成していきたいと考えます。
研究
『大阪発の新しい循環器医療を世界の患者さんに届ける』ことを目標に、適切な仮説の提示、病因の同定、病態の解明、そしてそれらの臨床への応用の4つの視点に立ち、各研究グループが協力して研究を進めています。
当教室には8つの研究グループがあり、互いに協力しながら世界トップレベルの研究を進めています。基本的には教室員それぞれがテーマを持ち、グループを超えてさまざまな情報を共有しながら研究を進めていくスタイルです。当教室では、病棟スタッフも研究者であるだけではなく、全体としての研究チームの一員と考えています。
1.実臨床に根付いた適切な仮説を提示する
(臨床リサーチクエスチョン解明グループ・多施設共同臨床研究グループ)
症例は細かく見れば1例1例が異なります。“臨床医の眼”、”AIの眼”で観察し、新しい仮説を提示し、連携病院を含む多施設研究で普遍性を検証します。
2.病因遺伝子を同定する
(病態分子探索グループ、重症心不全内科治療学研究グループ)
日本医療開発研究機構(AMED)が主導する臨床ゲノム医療データベース事業や、未診断疾患の原因究明プロジェクト(IRUD)に、循環器主要拠点施設として参画し、遺伝性心血管疾患症例のゲノム情報データベースを作りました。更にこの実績を連携病院に拡げることで新規病因遺伝子の同定、及び臨床表現型とジェノタイプの関連を研究しています。
3.細胞・代謝機能を解析し、循環器疾患の病態を解明する
(分子心臓病研究グループ、病態分子探索グループ、重症心不全内科治療学研究グループ・循環器脂質・動脈硬化グループ)
オートファジー、ミトコンドリア呼吸鎖活性制御、脂質代謝、血管増殖シグナル、DNA損傷応答等の細胞機能に着目し、これらの心血管疾患における役割を調べることで病態解明、新規治療標的の同定を目指しています。
4.基礎研究の成果を、新技術開発により臨床に還元する
(心血管再生グループ、循環器脂質・動脈硬化グループ、医療機器開発グループ、重症心不全内科治療学研究グループ)
再生医療等安全性確保法にもとづいて同種細胞移植である「重症家族性高コレステロール血症(主としてホモ接合体)に対する同種脂肪組織由来多系統前駆細胞移植療法の安全性の検討」を行っている他、再生医療の実現化、ゲノム編集技術の臨床応用を目指した研究を行っています。また、医工連携を元に医療機器開発にも取り組んでいます。
さらに、当教室は「徹底的にヒトにこだわる」を最大の指針として、ヒトの疾患を解明するために日々研究を進めています。中心となるヒューマンサンプルセンターでは、患者さんの臨床データ、統合画像解析、生体サンプルとして症例の血液、心筋組織検体の蓄積と、不全心筋組織遺伝子発現データベースの構築、疾患iPS細胞の樹立等を行っています。それら貴重な生体サンプルを各研究グループで活用し、最終的には患者さんのためになる研究を進めています。
教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)
1.留学
若手医師の留学を推奨。希望次第で全面的にサポートしている
当教室では、留学を強く推奨しています。海外では、アメリカやヨーロッパを中心に留学実績があります。私が就任してから留学した教室員は5名(2017年現在)で、留学の目的は、臨床の技術習得、基礎研究、CTやMRIなどの画像研究など、教室員によりさまざまです。
私(坂田泰史教授)は、教室員の留学先にできる限り訪問すると決めています。それは、私自身のアメリカ留学時代に、師匠の訪問が大きな励みになった経験からです。昔に比べて留学を希望する教室員は減っていますが、もし教室員が希望するのであれば、全面的にサポートします。
【実際に教室員が留学したことのある大学】
- Baylor College of Medicine (アメリカ)
- Massachusetts Institute of Technology , Department of Biology(アメリカ)
- UCLA School of Medicine , Cardiac Proteomics and Cell Signaling , Laboratory Department of Physiology(アメリカ)
- Children’s Hospital Medical Center , Molecular Cardiovascular Biology(アメリカ)
- Stanford University(アメリカ)
- Mayo Clinic Division of Cardiovascular Diseases(アメリカ)
- Harvard Medical School , Cardiovascular Division Department of Medicine , Brigham and Women’s Hospital (アメリカ)
- San Raffaele Hospital , Arrhythmia Unit and Electrophysiology Laboratories(イタリア)
- Columbia University Medical Center , Molecular Medicine(アメリカ)
- Karolinska University Hospital , Department of Cardiology(スウェーデン)
- Translational Cardiovascular Therapeutics , William Harvey Research Institute , Queen Mary‘s School of Medicine and Dentistry , University of London (イギリス)
- King’s College London , Cardiovascular Division(イギリス)
- University Hospital Leipzig , Department for Interventional Angiology(ドイツ)
- Cedars-Sinai Heart Institute(アメリカ)
国内留学は全国から医師を受け入れるケースが多い
国内留学についても、本人が留学を希望すれば全面的にサポートします。
当教室は「重症心不全・移植専攻医育成プログラム」を行い、全国の大学や主要病院からの医師を受け入れ、1〜2年の臨床経験を積めるシステムを実施しています。当プログラムは、1年コースを修了すると大阪大学総長名で修了証が授与されます。
2.臨床医・基礎研究者・教育者をメインにあらゆる将来像を描ける
当教室は多様性を重んじ、キャリアパスについても本人の希望や特性を十分に考慮します。
将来的なキャリアパスとして、臨床医、基礎研究者、教育者がメインではありますが、教室員のなかには、中央省庁(厚生労働省・文部科学省など)で行政に携わる者、医療情報学の道に進む者、会社を立ち上げる者などが実際にいました。本人の希望次第で、多彩な将来像を描くことができます。
また、女性のライフイベントに合わせ、働き方や勤務病院の希望に対しては、できるだけのサポートを行います。確かなスペシャリティーと診療技術を身につけ、末永く医療に携わりたい女性医師を歓迎します。
3.関連病院
当講座は大阪、阪神間を中心に30を越える関連病院を持ち、各地域で主力となる高いレベルを維持しています。また、これらの病院とともに、大阪循環器部会( Osaka CardioVascular Conference : OCVC )を結成し重要なクリニカルクエスチョンに対して多施設共同臨床研究を行っています。
現在進行中の研究例
- 持続性心房細動症例に対して追加通電の有無が心房細動再発に及ぼす影響に関する研究 -多施設共同前向き無作為割り付け非劣性試験- EARNEST-PVI
- 左室収縮能が保たれた心不全の予後に関する多施設共同前向き観察研究 PURSUITE-HFpEF
医局の構成
所属医師 | 100名ほど |
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専門医 | 内科学会認定内科医 82名
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男女比 | 約85:15 |
所属医師の 主な出身大学 |
大阪大学、神戸大学、大阪医大、大阪市立大学、和歌山県立医大、徳島大学、愛媛大学など |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
約 55 : 45 |
教室の構成・出身大学
当教室には、大学院生や外国出身の教室員を含めて全体で100名ほどのスタッフが在籍しています。学閥などはなく、全国の大学から教室員が集まっています。私自身、教室員の出身大学を気にしたことはありません。臨床・研究ともに、出身大学は関係なく、努力の結果を実らせた者が評価されるべきであると考えます。
研修生へのメッセージ
この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
大阪大学 大学院医学系研究科循環器内科学 教授
坂田 泰史 先生
1993年に大阪大学医学部医学科を卒業後、同学医学部附属病院や大阪警察病院における研修医期間を経て2002年に医学博士を取得。同年より2年間、米国テキサス州ベイラー医科大学循環器内科へ留学した。帰国後は大阪大学医学部附属病院循環器内科にて勤め、2013年より現職。大学病院での臨床の傍ら、循環器疾患にかかわる研究と後進の教育に力を注ぐ。