公開日 2018年11月02日 | 更新日 2018年11月29日
東京大学心臓外科学
補助人工心臓や心臓移植の症例数が豊富な日本トップクラスの教室
東京大学心臓外科の最大の特徴は、通常の虚血性心疾患、弁膜症、大動脈疾患、先天性心疾患に加え、治療が困難な重症心不全治療の日本における拠点であり、補助人工心臓(VAD)や心臓移植の症例数が非常に多いということです。
通常の心臓手術の技術習得に加えて、重症心不全外科治療の技術を身に着けることが可能で、世界に通用する心臓血管外科医を育成しています。また、入局をしないで重症心不全外科治療の領域を集中的に学びたいという医師にとっても最適な環境を整備しています。
当教室では、2010年より定期的に重症心不全フェローシップを実施しています。このプログラムは、国内や海外から留学生や研修生の受け入れ促進を目的としており、レジデントの期間を経た海外の若手医師が、さらなる専門性を磨くために設置しています。留学・研修期間は6か月から2年程度です。国内留学の外科医に対しては有給のポジションを用意し、優秀な私費外国人留学生に対して研究奨励費を支給することで、留学生の東大心臓外科での活躍を支援しています。2016年12月までに、全国各地から約30名のフェローが修練を受けました。フェローシップ経験者の大多数が所属病院でのVADプログラムの開設、さらには植込み型VAD実施施設認定に貢献しています。フェローの所属元も国立大学や私立大学、民間病院に至るまで様々です。
医局情報
診療科 | 心臓・血管外科 |
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専門分野 | 心臓外科学 |
症例・ 手術数 |
2017年の入院手術数:334例(心臓大血管症例)、その他入院手術65例、外来手術なし |
関連病院 |
当院 関連病院 |
医局の門戸が非常にオープン
当教室に所属する医師には、共通して穏やかで温かいという特徴があります。
一般的に、東京大学心臓外科には二つのハードルがあるといわれています。一つ目は「東京大学」というハードル、二つ目は「心臓外科」というハードルです。このふたつのワードを聞き、入局するには敷居が高いと感じてしまう方が多くいるとよく耳にします。
確かに、ネームバリューという意味ではやや入局に勇気がいるかもしれませんが、実際は非常にオープンな環境で、堅苦しい雰囲気は全くありません。
たとえば、これまでにトレーニングを受けたフェローの方々に東京大学心臓外科の第一印象を伺うと、やはり皆さん「最初は、東大心臓外科はハードルが高くて、とてもじゃないけれど自分には務まらないと思っていた」と述べられます。しかしながら、「いざ医局に入ってみたら皆さんが温かく、協力的で非常に仕事がしやすかった」と言ってくれます。
そうした口コミが全国的に広まり、最近では入局志願者も増えてきています。ですから、東京大学だから、心臓外科だからといって身構える必要はありません。ぜひ躊躇することなく、入局の門を叩いていただきたいと考えています。
教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)
1.若手医師の頃から手術ができるのか
やる気があり実力が一定のレベルに達していれば若手の頃から手術を経験できる
当然ながら、手術をするにはそれに見合う技量が必要です。しかし、それは経験のない若い先生が全く手術を経験する機会がないという意味ではありません。
当教室では、一定のレベルに達している方であれば若手の先生にも手術を担当していただきます(大学病院ではその機会を作ることが少し難しいため、関連病院での手術が中心になります)。もちろん、出身大学などによる待遇やチャンスの差も全くありません。
2.若いうちから経験を積むには「やる気」が重要
また、若いうちから手術を多く経験するには、トレーニングレベルと同様にやる気が重要です。やる気がある方はそれだけチャンスが多く巡ってくると考えます。指導医である先輩医師はなるべくチャンスを与えてくれるように配慮していますが、「待ち」の姿勢ではなく自ら積極的な姿勢を持ち続けるように意識していただきたいと思っています。
3.留学実績
目的を決定すれば留学は可能
志望者には基本的に留学を許可しています。ただし、とにかく行きたいという中途半端な動機だけで留学することは認めていません。それはその人自身のためにならず、留学を引き受けてくれた病院にも失礼にあたるからです。
留学を希望するのであれば、きちんと事前に目的を決定する必要があります。目的を決めておかなければ、留学に行ってみたは良いが最終的に何の結果も残せなかった、という事態になりかねません。
臨床目的で留学する場合
臨床留学する若手は、欧米の一流施設で臨床の先端技術を身に着けるべく、強い思いを持って試験に合格し留学を果たしています。
たとえば臨床であれば手技の向上や新しい技術の習得が目的となりますが、留学にあたり多くの準備が必要です。現在、米国に留学を希望する場合はUSMLEに合格しなければなりません。今でも東南アジアには日本の免許だけで留学が可能ですが、「英語の勉強が面倒だから」という生半可な気持ちの人は、どのような留学先であっても勉強を続けることは難しいでしょう。
一方努力を怠らなければ、たとえ当初は英語が苦手だった若手でも、真剣に勉強してUSMLEをあっさり取得し、留学先でも良い結果を残している場合が多いと感じます。
研究目的で留学する場合―過去の医局員の研究例は?
研究目的の留学であれば、どのような研究をやりたいのかを自分のなかで明確にイメージする必要があります。イメージが固まらないまま留学してしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔しかねません。
実例を挙げると、ハーバード大学付属のボストン小児病院に研究目的で留学した若手医局員たちは、小児においてさまざまな低侵襲心臓手術を可能にするために必要な医療機器についての開発研究を行い、国際学会で数多く発表してくれました。
また、これまでモデル作りが極めて難しかった先天性心疾患の動物モデルを作成し、世界的に貢献を果たした若手もいます。
常に留学者は一定数おり、現在ではスタンフォード大学(臨床)、コロンビア大学(臨床)、クリーブランドクリニック(臨床および研究)。テンプル大学(臨床)やドイツの施設(臨床)に留学しています。
とはいえ、私たちの専門は臨床ありきの診療科であり、研究よりは臨床目的で留学をする方のほうが多い傾向にあります。
4.関連病院
関東近県をはじめ東北にもあり活発に交流
東大病院では外科修練プログラムが充実し、外科専門医取得から心臓血管外科専門医取得まで一貫してシームレスにできる修練システムを構築しています。
外科専門医修練関連病院は都内や関東近県に多くありますが、福島県や静岡県などとも交流しています。以下に東大病院外科修練医プログラムに参加している外科専門医修練施設を示します。
関連病院(都内)
JR 東京総合病院、青梅市立総合病院、大森赤十字病院、公立昭和病院、社会保険中央総合病院、せんぽ東京高輪病院、東京共済病院、東京警察病院、東京労災病院、都立多摩総合医療センター、東都文京病院、関東中央病院、国立国際医療研究センター、同愛記念病院、NTT 東日本関東病院、河北総合病院、立川相互病院、三井記念病院、東京病院 、国立成育医療研究センター、JCHO東京新宿メディカルセンター、東京大学医科学研究所附属病院、都立墨東病院、東京逓信病院、国立がん研究センター中央病院、日本赤十字社医療センター
関連病院(都外)
茨城県立中央病院、日立総合病院、関東労災病院、茅ヶ崎市立病院、静岡県立総合病院、藤枝市立総合病院、名戸ヶ谷病院、焼津市立総合病院、国保旭中央病院、キッコーマン総合病院、竹田綜合病院、共立蒲原総合病院、船橋二和病院、大船中央病院、東葛病院、埼玉県立小児医療センター、横浜労災病院 、名戸ヶ谷あびこ病院、筑波記念病院、埼玉県立がんセンター、関越病院、おおたかの森病院、国立国際医療研究センター国府台病院、群馬県立心臓血管センター、群馬県立小児医療センター、埼玉医科大学総合医療センター
以下に心臓血管外科専門医修練関連病院を示します。
関連病院(都内)
公立昭和病院、都立多摩総合医療センター、三井記念病院、国立成育医療研究センター、日本赤十字社医療センター、虎の門病院、杏林大学医学部附属病院、東京都健康長寿医療センター
関連病院(都外)
国保旭中央病院、竹田綜合病院、横浜労災病院 、筑波記念病院、群馬県立心臓血管センター、群馬県立小児医療センター、埼玉医科大学総合医療センター
(東京大学心臓外科より引用)
5.どのようなキャリアを積むのか
入局医師の近年の着任先は下記の通りです。
- 三井記念病院 病院長・心臓外科 部長・心臓外科 科長
- 御代田記念病院 病院長
- 東京都健康長寿医療センター センター長・心臓外科部長
- 群馬県立小児医療センター 副院長・心臓血管外科 部長
- 聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科 教授
- 東邦大学医療センター佐倉病院 心臓血管外科 教授・心臓血管外科 准教授
- 杏林大学 心臓血管外科 教授
- 日本医科大学心臓血管外科 臨床教授
- 北里大学 心臓血管外科 教授・心臓血管外科 准教授
- 埼玉医科大学総合医療センター 心臓血管外科 准教授
- 虎の門病院 循環器センター外科 部長
- 横浜労災病院 心臓血管外科 部長
- 都立多摩総合医療センター 心臓血管外科 部長
- 国立成育医療研究センター 心臓外科 医長
- 筑波記念病院 心臓血管外科 部長
- 国保旭中央病院 心臓外科 部長
- 日赤医療センター 心臓血管外科 部長
- 群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科 部長
(東京大学心臓外科より引用)
医局の構成
所属医師 | 教授1名、准教授1名、講師3名、特任講師2名、助教4~6名、大学院生5~7名、特任臨床医2名 |
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専門医 | 外科専門医:18人
|
男女比 | 19:1 |
所属医師の 主な出身大学 |
東京大学12名、他の国公立大学6名、私立大学2名 |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
12:8 |
医局の構成と女性医師の割合
現在、心臓外科は教授1名、准教授1名、講師3名、特任講師2名、助教4~6名、大学院生5~7名、特任臨床医2名が大学に勤務しています。外部の関連施設は10施設以上です。
最近は、医学部の3分の1は女性といわれており、外科医を目指す女性医師の数も徐々に増えています。女性医師の場合、ライフイベントなど様々な理由により途中で分野変更する方もいらっしゃいますが、当教室には現在は3名所属しています。
研修生へのメッセージ
住所:東京都文京区本郷7丁目3-1
電話:03-3815-5411
公式HP:http://www.h.u-tokyo.ac.jp/index.html
メディカルノートで病院詳細を見るこの医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
東京大学医学部附属病院心臓外科教授
小野 稔 先生
東京大学医学部、米国オハイオ州オハイオ州立大学心臓胸部外科臨床フェローを経て東京大学医学部附属病院心臓外科で教授を務める。心臓外科の中でも特に重症心不全の治療を専門とし、補助人工心臓、心臓移植を含めた最先端治療を行っている。それらにおいて日本有数の症例数と成績を誇り、国際学会においても高い評価を受ける。東京大学医学部附属病院心臓外科の最先端治療を求め日本全国から集まる患者さんたちのため、日々治療に力を尽くしている。