公開日 2018年12月20日 | 更新日 2018年12月20日

自治医科大学

消化器・一般外科学講座

幅広い外科領域をカバーするアクティブな教室

自治医科大学消化器・一般外科教室はその名のとおり消化器外科、一般外科領域全般を担当しています。
近年の大学病院外科の多くは臓器別にわかれて診療を行っていますが、当教室は消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)、肝胆膵脾、乳腺、副腎など広い分野をカバーする珍しい教室です。
また、地域の基幹病院であるため症例数が非常に多く、high volume centerとして機能しています。その症例数は各領域で全国の上位10~20位に入り、北関東ではトップレベルです。こうした数多くの症例に対する実績から高いレベルの臨床成績を挙げています。

医局情報

診療科 消化器外科
専門分野 消化器・一般外科
症例・
手術数
年間約1,500例の手術を実施
関連病院

当院

関連病院

Mortalityゼロ、Morbidityゼロ、が教室のテーマ

当院では診療科ごとに、Web上で診療実績を示したアニュアルレポートを公開しています。このレポートのなかでは手術死亡の情報まで掲載していますが、そのデータでは、消化器外科における10年間の予定手術における死亡例は5例でした。当教室では年間約1,500例、10年間では約15,000件の手術を実施していますが、この待機手術死亡率の低さが当教室の大きなアピールポイントです。

外科治療は結果がすべてといえます。そのため「Mortalityゼロ、Morbidityゼロ」を目指すことが外科診療においては最も重要であり、最優先の事項です。そうした目標を達成するために、当教室では外科手技のスキル向上のための体制づくりを整えています

質の高い診療を行うためには、まず外科医が健康でなければならない

こうした質の高い診療を行うために、当教室では外科医の労働環境の改善に積極的に取り組んでいます。

2014年から当直明けに手術へ参加することを禁止しており、同年12月から現在に至るまで当直明けに手術へ参加した外科医はおりません。また病院全体で「センター当直制度」という10人程度のチームが主軸となって、救急外来診療を担当する制度を設けました。その結果、外科医全体の当直の回数を減らすことができました。現在では、当直明け業務の軽減や休日化の推奨にも取り組んでいます。質の高い診療を実現するためには、こうしたゼロベースで業務内容を見直すことが必要といえるでしょう。

患者さんが増えたぶんだけ、医師やコメディカルスタッフに頑張ってもらうという考え方ではなく、まずはシステムを見直し、組織的な効率化を図ることが重要です。当院では病院の仕組みを一から見直していくことで、より働きやすく、より質の高い医療を提供できるように取り組んでいます。

専門分野

消化器外科領域

食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆道・膵臓などのあらゆる消化器の疾患に対し、消化器センター内科と協力して診療にあたっています。手術前後の化学療法においては、臨床腫瘍科とカンファレンス等で協議し、連携して進めています。加えて移植外科部門と連携し、肝移植のドナー手術も行っています。

消化器外科は3つのグループにわかれています。

・上部消化管グループ

食道、胃疾患の診断や治療を行う。

・下部消化管グループ

大腸がんおよび炎症性腸疾患の外科治療を行う。

・肝胆膵グループ

肝臓、胆道、膵臓、脾臓、ヘルニア、後腹膜疾患の診断や治療を行う。

加えて肝移植ドナー手術腎移植手術にも参加している。

消化器センター外科部門(消化器外科) 手術件数

年間手術件数・・・1,164件

2016年アニュアルレポートより

乳腺科領域

乳がん診療の専門科として悪性疾患の判断だけでなく手術・術後補助治療・再発治療を同一科内で一貫して行っています。また形成外科の協力を得て一期的な乳房再建も行っています。今後は遺伝外来を整備し、遺伝カウンセリング・BRCA関連遺伝子検査が行える体制を整える予定です。

乳腺外科 手術件数

手術症例病名別件数

乳癌・・・308件

その他の乳腺疾患・・・4件   

(計312件)

2016年アニュアルレポートより

当教室では若い方も術者として手術ができる体制を整えています。卒後3年目~10年目の教室員は上記3つのグループを4か月ごとにローテーションし、1年間ですべてのグループを経験できる体制を取り入れています。

そして、基本的には卒後3年目~10年目の若手教室員に執刀医を任せ、卒後10年目を超えると指導者の立場に回ります。1つのチームに所属する期間を4か月に区切ることによって、その間にこういう症例を経験しよう、こういう手術経験ができるようにしよう、という目標をしっかりと立てて進めることができ、着実にスキルを磨いていくことができます。

研究

当教室では、質の高い臨床研究を行うことを奨励しています。当教室は消化器・一般外科のすべての分野で日本トップレベルの手術症例数を実施しており、臨床成績の向上のためにその豊富な臨床例を用いて臨床研究を行っています。

また2013年には当院に臨床研究支援センター(Support Center for Clinical Investigation)が設置されました。当センターは本学での治験、製造販売後臨床試験・調査、臨床研究を戦略的に推進し、臨床研究の支援をすることを目的に設置されたものです。

当センターには専任の外科教授が着任しており、臨床研究のノウハウを教室員へ指導しています。こうした当教室の研究をサポートしてくれる体制も十分に整えられています。

外科では臨床が重要視されがちですが、研究を行うことも非常に重要です。外科医は臨床成績がすべてであり、その臨床成績を向上させるためには臨床研究が欠かせません。そして臨床研究を行ううえでは基礎研究が必須です。こうしたことから当教室は研究面にも力を入れるというポリシーをもって進めています。

教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)

1.研修の流れ

当教室では、教室員のみなさんへキャリアプランの提示をしっかりとできるように心がけています。新専門医制度の施行によってまた変更が生じてきますが、現在のキャリアプランは下記のとおりです。

外科専門医コース(卒後3~5年目)

外科系専門医には、

  • 消化器外科専門医
  • 心臓血管外科専門医
  • 呼吸器外科専門医
  • 小児外科専門医

があり、それぞれの専門医になるためには、まず日本外科学会の「外科専門医」を取得する必要があります。

外科専門医を取得するためには卒後5年間で350例の手術経験(うち120例は術者)が必要であり、さらに消化器外科手術、心臓外科手術、血管外科手術、呼吸器外科手術、小児外科手術などそれぞれの分野ごとに最低経験数が決められています。

上記の経験を満たせるよう、当教室では専門医専攻医のための後期研修コースを提供しています。

すでに専門科を決定し専門科の研修に重点をおきたい研修医向けである。すなわち日本外科学会の外科専門医を取得するために2年間の卒後臨床研修で不足した経験の診療科を中心に3年目以降研修する。当然その内容は卒後臨床研修の内容により異なってくる。

(1年間新専門医制度実施が延期された猶予期間の間に、内容を変更しています.上記例の3年目「呼吸器外科」「救急/麻酔」の部分を必要な他領域の研修にあてることになります)

卒後3年目の4月に大講座内の各部門に所属していただきます。また、卒後3~5年目のうち1年間(原則的に4年目)は学外の関連施設でgeneral surgeonとしての研修を行います。

卒後6年目~卒後10年目・15年目

毎年2-3名が大学院へ進学します。

3~5年は臨床に専念していただき、6年目以降は臨床研修の継続、専門医・指導医の取得、基礎・臨床研究への取り組みなど、個人の要望に沿ってキャリアプランを計画します。卒後10~15年目になると、その後の10年をどのように過ごし、これから自分がスペシャリスト・ゼネラリストどちらの道に進むのか、またどのようにスキルアップしていくのかを考えるタイミングに差し掛かると思います。そうした時期を迎えたときに、しっかりと自身で判断できる能力・スキルを身につけることを目標にしています。

2.キャリアパス

どういった場所で活躍したいのか、留学したいのかについては、教室員の意見を積極的に聞いていくようにしています。当教室では、働き方の多様性(diversity)だけでなく、学問的な多様性を尊重しています。

キャリアパスの一環としてフリー研修制度を導入し、現在国立がん研究センター東病院や、JCHO東京山手メディカルセンターで研修を行っている教室員がいます。

「この疾患を学ぶためにここへ行きたい」と強い意志を持った教室員もおり、そうした方の希望が実現出来る様にサポートしています。

3.関連病院

当教室の関連病院は下記の通りです。

(2017年6月現在)

栃木県

  • 新小山市民病院外科   
  • 芳賀赤十字病院外科   
  • 那須南病院外科       
  • JCHOうつのみや病院外科  
  • 済生会宇都宮病院外科        
  • 石橋総合病院外科     
  • 西方病院外科          
  • 那須中央病院外科     
  • 黒須病院外科          
  • 小金井中央病院外科           
  • とちぎメディカルセンターしもつが外科
  • 茨城県 古河赤十字病院外科     
  • 常陸大宮済生会病院外科            
  • 結城病院外科                

群馬県   

  • 伊勢崎佐波医師会病院外科    

新潟県

  • 上越地域医療センター病院外科

埼玉県

  • 自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科   

4.留学

留学に関しても、従来から交流のある施設(Copenhagen大学など)だけではなく、新たな留学先(UC Irvine、Heidelberg大学など)を開拓し、1年に1~2名程度が留学しています。また、当教室には約10年在籍している米国人医師がおり、英語プレゼンに対するアドバイスや、留学先の調整などを担当していただいています。英語プレゼンを上達させるためには、こうした外国人医師からの指導の機会がとても重要であるといえるでしょう。

医局の構成

所属医師 80名
専門医

日本外科学会指導医:15名
日本外科学会専門医:51名
日本消化器外科学会指導医:8名
日本消化器外科学会専門医:33名
日本消化器病学会指導医:2名
日本消化器病学会専門医:15名
日本消化器内視鏡学会専門医:18名
日本肝胆膵外科学会高度技能指導医・専門医:7名
日本内視鏡外科学会技術認定医:13名

男女比

66 : 14

所属医師の
主な出身大学

自治医科大学 22名、弘前大学 7名、秋田大学 5名、東京大学 5名、新潟大学 4名、富山大学 4名、旭川医科大学 3名、6大学 2名、18大学 1名(合計出身大学数:31大学)

同大学出身者と
他大学出身者の比率

22 : 58 (自大学出身者割合:27.5%)

研修生へのメッセージ

2018年10月に建設を進めていた新館南棟を全面稼働しました。新館南棟の開設により、手術室が6室の増室、ICU6床増床、HCU(高度治療室)20床新設、IVR(血管内カテーテル治療)センターなどが新設され、高度急性期・急性期医療をより多く提供できる体制が整います。この新棟が完成すると年間約2,000件の手術件数増加が可能になると予想されています。そうした今後大きく伸びていく、実力をつけることができる当教室で学んでいきたいという方にぜひ入局いただきたいと思います。
手術件数も大きく伸びることが予想されますが、その一方で生じてしまう医療従事者の負担は可能な限り軽減していきたいと考えています。以前は「外科医は24時間、365日外科医たれ」とおっしゃる先輩方もいましたが、これからの世代の方々にはオンオフをしっかりつけて取り組んでいってほしいと思っています。働くときはしっかり働き、休むときはしっかりと休むという体制が当教室では整いつつあります。環境を整えて、より質の高い医療の提供を目指していくことが当教室の目標です。
外科手術は「手術をこなす」ことがゴールではありません。「死亡例を出さない」「術後合併症を起こさない」など外科医には終わりがありません。こうした常に上を目指し続けることにやりがいを感じる方に、ぜひ来てほしいと思っています。一度、自治医科大学の消化器外科・一般外科へ足を運んでみてください。きっと学閥がなく自由でアクティブであり、常に上を目指し続ける当教室の魅力を感じていただけると思います。

この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生

自治医科大学病院長 消化器・一般外科

佐田 尚宏 先生

東京大学医学部卒業後、東京大学医学部第一外科助手を経て、1994年ドイツDuesseldorf大学消化器科客員研究員となる。帰国後はキッコーマン総合病院外科部長をつとめ、その後に自治医科大学消化器・一般外科の講師、同助教授を経て2007年同教授・鏡視下手術部長、そして2014年に同病院副病院長、2015年に病院長に就任する。教授をつとめる消化器・一般外科では、消化器外科、乳腺科、ヘルニアや肛門疾患などの一般外科疾患、内分泌外科、移植外科など幅広い分野において、良性・悪性・炎症性・先天性疾患を問わず、専門的かつ積極的な外科診療を行っている。