公開日 2019年01月21日 | 更新日 2019年01月21日

防衛医科大学校

脳神経科学教室

原則、防衛医科大学校出身者が所属する「日本一小さな」脳神経科学教室

防衛医科大学校の医局は、教授を含む教官を除き防衛医科大学校の卒業生でないと在籍できません。そのため少数精鋭の教室です。大きな教室によくある、各医師がサブスペシャリティーに特化して専門外は扱わない、ということはしておらず、教室のメンバー全員が脳神経外科の全領域の診療にあたっています。そのため、さまざまな症例に触れられ、脳神経外科医としての経験値をあげることができる点が強みです。
ほかにも少人数の教室ならではのメリットがあります。教授をはじめとした教室員全員が患者さん一人ひとりの状態を把握し、全員で診療する体制が整っていることです。そのためメンバーの連携も非常に密で、何かあればすぐに教授の私にも相談が可能です。

医局情報

診療科 脳神経外科
専門分野 脳神経科学
症例・
手術数
鍵穴手術による未破裂脳動脈瘤のクリッピング術や頭蓋底腫瘍摘出術を現在まで300例以上実施、年間手術総数は約400例
関連病院

当院

関連病院

専門分野

基礎研究をメインに業績をあげる

頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害、くも膜下出血に伴う脳血管攣縮などの基礎研究に力を入れています。国立がん研究センターと悪性脳腫瘍の病態解明や新たな治療法などの共同研究も行っており、研究は非常に盛んです。文部科学省管轄の大学ではないものの、通常の大学と同じように研究に力を入れ、当教室に在籍したからには、臨床だけでなくしっかりと研究をし、論文を発表していただきたいと考えています。

そのような考えから、教室員は少ないものの年間15本程度の論文を発表しています。主要なジャーナルでは「Journal of Neurosurgery (3編、2018年)」への論文掲載実績があります。

近年では臨床にも力を入れており、私が専門とする鍵穴手術による未破裂脳動脈瘤のクリッピング術や頭蓋底腫瘍摘出術を現在まで300例以上実施しました。これは、日本で一番の症例数です。脳血管障害の外科治療や頭蓋底腫瘍の手術を中心に手術を行っており、ほかにも頚部内頚動脈狭窄症に対する血栓内膜剥離術など、難易度の高い病変に対しても積極的に手術を行い、成績も良好です。

教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)

1.研修の流れ

自衛官として勤務しながらも高レベルの研修を受けることが可能

防衛医科大学校は、卒業時に専門とする診療科が決定します。また卒業生に対して卒後9年間は自衛隊で勤務する「義務年限」がありますから、卒後、すぐに陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊のいずれかに所属し、各自衛隊からの派遣というかたちで初期研修医として防衛医科大学校で2年間学びます。

初期研修を修了したあとの大まかな流れは次のとおりです。

3年目〜4年目

部隊勤務を行います。陸・海・空のうち自身が所属する自衛隊の、全国にある基地に赴いて初級幹部自衛官として勤務します。週に1〜2回、所属基地近辺にある提携先の病院で通修(研修)を受けることができ、腕を磨きます。通修先の病院は、北海道の札幌禎心会病院、熊本県の済生会熊本病院など実力のある病院です。この2年間で、開頭手術を行える程度になります。

5〜7年目

防衛医科大学校に戻り、専門研修を受けます。さらに専門分野の知識や技能を磨き、医師としての資質の向上を図ることが目的です。脊髄や血管内治療など当教室では専門外の領域を学びたい場合は、短期の国内留学をします。

外科医に重要な手術手技の習得も力を入れています。特に脳動脈のクリッピング術をある程度経験できるようなカリキュラムを組んでおり、執刀の際は必ず上級医がつきます。これは、確実に手技を身に着けてほしいからだけでなく、患者さんにも一流の手術を受けてほしいとの思いがあるからです。

8~9年目

専門医を取得します。通常と比べて、1年遅れでの専門医試験の受験となるものの、2017年現在の合格率は100%です。再び部隊勤務があります。

10年目

防衛医科大学校卒業生としての義務年限が明け、そのまま自衛官として勤務を続ける、外部の大学や病院で勤務するなど自身の希望に合わせてキャリアを選択します。

2.キャリアパス

多くは他大学や他病院へ。教官などになる道も

義務年限終了後のキャリアパスとしては3つの道があります。

研究科(大学院)で医学博士取得

研究科学生となり、博士号取得を目指します。研究科も医学教育部(学部)と同じく、授業料等は国が負担するため、研究科修了後は自衛隊で勤務をします。

防衛医科大学校の教官

防衛医科大学校に残って臨床や研究を続け、教官となるキャリアパスもあります。

他大学や他の病院での勤務

卒業生のおよそ7割程度が他大学や他の病院で脳神経外科医として勤務する道を選びます。

3.留学

アーカンソー医科大学やオレゴン大学への留学実績があります。

医局の構成

所属医師 教授1名、臨床教授(准教授)1名、講師3名、助教2名、研究科学生(大学院生)2名、専修医、研修医など約15名
専門医

8人

男女比

10 : 0 (女性の入局も歓迎)

所属医師の
主な出身大学

防衛医科大学校12名、群馬大学1名、東邦大学1名、浜松医大1名

同大学出身者と
他大学出身者の比率

4 : 1

優秀な医師がそろう少人数の教室

現在は教授1名、臨床教授(准教授)1名、講師3名、助教1名、研究科学生(大学院生)2名、専修医、研修医など約15名が所属しています(スタッフは7名)。現在はすべて男性ですが、防衛医科大学校の卒業生の4割弱は女性ですから、女性の入局ももちろん歓迎しています。出身大学は防衛医科大学校出身がほとんどであるものの、スタッフだと私のような、他大学出身者もいます。

メンバーは皆まじめで、優秀な方が多いです。脳神経外科は他科と比べても忙しいですから、体力のある方も多い印象です。

研修生へのメッセージ

当教室は小さい教室ながらも、一人ひとりの能力が高く多くの分野で多数の実績をあげています。さらに、卒業時には全員診療科が決まっているという特徴から、志が高く意欲を持って何事にも取り組む医師が多く、切磋琢磨でき非常に学びがいのある環境です。少数精鋭だからこその、全員に目が届く細かな指導やサポートを受ければ、義務年限が明けるころには一人前の脳神経外科医となっていることでしょう。
私たちは、一流の脳神経外科医を育てることを目指しています。脳神経外科医として生きる覚悟を持った志の高い医師は、ぜひ私たちと一流の脳神経外科医を目指しましょう。

この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生

総合東京病院 脳神経外科 脳卒中センター長

森 健太郎 先生

総合東京病院 脳神経外科 脳卒中センター長。鍵穴手術を導入する数少ない医師の中の1人。これまでに行った鍵穴手術の症例数は268例以上。術前の徹底的なシミュレーションと低侵襲な手術をモットーに治療に取り組んでいる。また鍵穴手術を広めるべく学会活動にも力を注いでいる。日本脳神経外科学会認定専門医、日本脳卒中学会認定専門医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医・教育医。