

公開日 2018年12月20日 | 更新日 2018年12月20日
広島大学
広島大学・腫瘍外科は、呼吸器外科、消化器外科(食道中心)、乳腺外科の3グループにわかれ、がんの診療を行っています。そのがん診療を世界的なエビデンスに忠実に実施しながらも「超一流の向こう側」を目標に、常に革新的な治療を目指してきました。私が名付けた「ハイブリットVATS」と呼ばれる低侵襲な肺がん胸腔鏡手術もそのひとつです。そのほかにも、当教室では肺がん、乳がん、食道がんにおいて、「JCOG:Japan Clinical Oncology Group」の中核施設として多くの臨床試験を積極的に行い、新しい抗がん剤に関する世界的な治験にも参加しています。
私たちが日々接する患者さんの多くはがん患者さんです。社会では高齢化によりますますがん医療のニーズは増しています。よって、確かな医療知識や技術のみならず、信頼される温かな人間性や洞察力、向上心も必須です。本邦はもちろん、世界で大きく活躍できる腫瘍外科医を私たちは育成したいと思っています。
診療科 | 外科 |
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専門分野 | 腫瘍外科 |
症例・ 手術数 |
600例/年 |
関連病院 |
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冒頭でも述べたとおり、当教室は呼吸器外科、乳腺外科、消化器外科の3つのグループにわかれて、それぞれの臨床・研究・教育を行っています。
呼吸器外科グループでは、主に肺がんを中心とした臨床と研究にあたっています。肺がんの患者数は年々増加しており、日本での臓器別がん死亡数で第1位です。
呼吸器外科グループでは、肺がんに対して胸腔鏡を用いた手術「VATS」で区域切除など縮小手術を用いることで、傷が小さくさらにできるだけ肺機能温存可能な手術を積極的に実施しています。手術の成績は「Cancer」「Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery」「Annals of Thoracic Surgery」といった著名な世界的な雑誌に掲載されています。
研究では、国内外の学会のシンポジウムやパネルディスカッションに参加し、新しい治療法や成績を発表しています。
乳腺外科グループは、乳がんの診療を専門としています。乳腺外科グループで診療する患者さんのほとんどが女性ということもあって、女性医師のニーズが高く、当グループでは複数の女性医師が診療に当たっています。手術では創が小さい内視鏡を駆使した方法が特徴です。研究においても新たな治療法や検査法の開発を行っています。
消化器外科グループは消化器のなかでも特に食道がんを中心に診療を実施しています。食道がんは発見時にはすでに進行していることが多く、そのような進行がんには手術前に化学療法と放射線療法を組み合わせて実施して、その後に根治手術を行うことで、より効果的な治療を実践しています。また、内視鏡手術も積極的に行っています。
研究では食道がんの遺伝子解析によって、がんの悪性度や予後因子の解明を進めています。そして食道がんの個別化医療を推進している段階です。
入局1〜3年目:最初の1年は大学病院や関連病院でジェネラルな診療ができるよう学びます。2年目からは、がんセンターなどの専門病院で、腫瘍の臨床を学び、専門性を高めます。
入局4〜7年目:大学院に入学して、研究を行います。
専門医は、通常、大学院入学前に外科専門医、その後、専門的な呼吸器外科専門医、乳腺外科専門医、消化器外科専門医の資格を取得します。
当教室に入局し、大学内や関連病院での後期研修を終えると、大学院に進学し学位を取得するよう勧めています。学位は医師として働くうえで必須のものではありませんが、日々進歩する医学を目の当たりにし、研究に打ち込む期間をつくることは長い医師人生において重要であると考えています。
当教室の関連病院は、いわゆるへき地の病院ではなく街の中心部の大きな病院が比較的多いです。
留学は世界の見聞を広げるためにも、ぜひ行ってほしいと考えています。当教室ではコンスタントに3名程度がアメリカやヨーロッパに留学しています。留学においてもしっかりと生活できるだけの給与が保証されている留学先を条件にしています。
留学先の例は以下のとおりです。
所属医師 | 30名強 |
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専門医 | 10名 |
男女比 | 8 : 2 (最近10年間は男女比 6:4) |
所属医師の 主な出身大学 |
広島大学、愛媛大学 |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
5:5 |
当教室は2017年現在、学内に大学院生を入れて30名強の教室員がいます。外科系の教室のため男性が多いですが、乳腺グループでは女性医師が増えてきています。女性医師のキャリアアップに考慮した勤務体制やキャリアプランの提案を行っており、実際には産休や育休を経て第一線に復帰・活躍している女性医師も複数います。例えば、3人のお子さんを産み育てながら、最新の診断治療を行い国内外の学会で学術成績を報告する乳がん専門の女性医師も大学で活躍中です。
出身者は他大学出身者と本学出身者が半々です。広島県出身で、いわゆるUターンで入局した医師もいます。出身大学に関係はなく、全員がレベルの高い腫瘍外科医になりたいという思いで入局していますから、お互いに切磋琢磨しながら学ぶことのできる環境となっています。また、グローバル治験を多く行っているので、肺がん、乳がん、食道がんという3種類の抗がん剤の最先端情報がいつもアップデートされた状態で習得できます。
この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科 教授、広島大学大学院医歯薬総合研究科 腫瘍外科 教授、広島大学病院 呼吸器外科 教授
岡田 守人 先生
ハイブリッドVATSと呼ばれる低侵襲な肺がん内視鏡手術の開発者として、世界的に知られる呼吸器外科医。「患者さんのことを第一に考え医療を行う」ことをモットーとし、患者に優しい肺機能温存縮小手術(区域切除)に積極的に取り組む。また、自身が開発したハイブリッドVATSの次世代への伝承にも尽力している。 TBSテレビ「これが世界のスーパードクター」、NHKテレビ「ドクターG」などのテレビ出演、週刊朝日、週間文春などの雑誌に頻繁に取り上げられている。