公開日 2018年11月27日 | 更新日 2018年11月27日

順天堂大学

呼吸器内科学講座

呼吸器疾患全般において高い専門性をもつ伝統

当教室は、1969年に開かれた日本で最も古い呼吸器内科専門の臨床教室です。肺がんの他、肺炎、びまん性汎細気管支炎、間質性肺炎、サルコイドーシス、肺循環、呼吸不全、COPD、嚥下性肺疾患、老年病学など、多岐にわたる呼吸器疾患を専門としています。
当教室は47年間にわたって多彩な呼吸器疾患に対する診療を展開してきました。そうしたことから、当教室では幅広い呼吸器疾患において、それぞれ高い専門性をもって診療していく伝統が受け継がれています。

医局情報

診療科 呼吸器内科
専門分野 呼吸器疾患全般
症例・
手術数
治療実績:16,124件、初診患者数:3,586件、再診患者数:44,872件、呼吸器内視鏡検査:573件(2017年度)  主な入院症例:原発性肺癌、肺炎、間質性肺炎、COPD、縦隔腫瘍、サルコイドーシス、気管支喘息、気胸、膿胸、OSAS、転移性肺腫瘍、LAM、中皮腫など
関連病院

当院

関連病院

研究室の3つのビジョン「垣根のない教室」「臨床と研究の両立」「教育の重要性浸透」

当教室は以下の3点をビジョンに掲げています。

  • 学閥を廃止し、意見を交換する
  • 臨床と研究の垣根をなくす
  • 教育の大切さを実感し浸透させる

学閥を廃止し、意見を交換することを目標にしています。後述する「出身大学」にもよく現れていると思いますが、順天堂大学以外の大学出身者が教室員の約半分に上ります。また出身大学にかかわらず、様々なバックグラウンドを持つ医師が重要なポストに就いているというところも当教室の特徴です。

たとえば先任准教授の瀬山邦明先生は北海道大学、総医局長を担う児玉裕三先生は順天堂大学、病棟医長の小山良先生は杏林大学、BSL(Bed side learning )教育を担当する塩田智美先生は筑波大学の出身です。こうした、本学出身者以外の医師も多くの重要な役職についているというところが、当教室の垣根のない様子を反映していると思います。

また臨床と研究の垣根をなくすことも当教室のビジョンです。「Physician Scientist」という言葉のように、すべての医師はPhysician(臨床医)でありScientist(研究者)であるべきです。臨床ができる人は研究もでき、研究ができる人は臨床もできるのです。

こうした力は、慢性疾患や難治性疾患に対応することが多い呼吸器内科医には必須であり、グローバルな視点を身に着けるうえで非常に重要なことです。Physician Scientistを育成していくということが当教室の大きな目標になっています。

そして3つ目のビジョンが、教育の大切さを実感し浸透させるということです。教育は最も重要な要素であり、相手に「教える」ということは自分自身が学ぶことに繋がります。人に教えるためには知識、そしてなによりも熱意が必要です。教えるのを厭う人間は成長することはできません。教育をやらないということは教室員として失格であるといえるでしょう。教室員全員が教えることの素晴らしさ、重要性を認識できるようにする、というのが当教室の最も大きな指針です。

この3つのビジョンを描きながら、当教室は日々より高いレベルの診療を目指して取り組んでいます。

専門分野

肺がんを中心として、多様な呼吸器疾患の診療にあたる

当科で主に診ている疾患は肺がんで、入院患者の約50%が肺がんの患者さんです。肺がんのなかでは、やはり非小細胞肺がんの診療が多く、当教室では内科的治療と診断を専門にしているため、比較的肺がんでも進行期のⅢ~Ⅳ期あるいは再発の方を対象としていることが多くなっています。

その他には肺炎、間質性肺炎、COPD、肺がん以外の腫瘍、サルコイドーシス、喘息、気胸、睡眠時無呼吸症候群、LAM、中皮腫などを診療しています。肺がんだけでなくそのほかの呼吸器疾患、そして希少疾患にまで幅広く対応しています。

また大学として肺がんに関する新しい治療法の開発にも熱心に取り組んでいます。非常に多くの臨床試験に取り組み、併用療法に関する医師主導の臨床試験や、承認前の臨床薬の試験も活発に進めています。創薬にも関わっているというところも当教室の特徴でしょう。順天堂大学のなかには30を超える診療科がありますが、当教室が最も多くの治験を進めています。肺がんの他にもLAMやCOPD、喘息の治験にも携わっています。

多彩な呼吸器疾患に対応する7つの研究グループ

当教室ではいくつかの専門グループに分かれて研究を進めています。

  • 肺腫瘍グループ(肺がん・中皮腫)
  • COPD、LAMグループ
  • 気管支喘息グループ
  • 肺循環グループ
  • 線維芽細胞グループ
  • 画像診断グループ
  • 呼吸管理グループ(呼吸不全・睡眠時無呼吸症候群)

多くの場合はこの7グループのいずれかに所属し、それぞれの専門領域の研究と臨床を進めていきます。

呼吸器内科はGP(General Practitioner:総合診療医)としての要素が非常に高い分野です。そのため、研究分野の専門性を高めるとともに、それ以外の疾患の外来も幅広く対応していく力を外来で身に付けていきます。年数を重ね、専門医をとり、サブスペシャリティが固まってくると、肺がん外来、喘息外来、COPD外来など、当院に開設されている専門外来を担っていくことになります。

教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)

1.研修の流れ

卒後~学位取得までの流れ

大学院に在籍する教室員は現在28名で、これはかなり多い数だといえるでしょう。基本的には全員が大学院に入っていただく方針です。

卒後1~2年目:初期研修

卒後3~4年目:後期研修(様々な内科診療科を回る)

卒後4~5年目:呼吸器専門の道へ進む(本院や関連病院などを回る)

        臨床のトレーニングを積む

卒後6年目~:大学院へ進学し、博士号取得(臨床研究・基礎研究どちらを選ぶかによって期間は異なるが約2~3年在籍する)

こうした流れで、卒後10年以内には学位をとっていただくことが一般的です。

2.専門医資格取得までの流れ

初期研修修了後に当科の教室へ入っていただきますが、まずは日本内科学会、日本呼吸器学会に入会し、内科専門医を取得します。その後並行して呼吸器疾患の専門修練を行いつつ、サブスペシャリティーとしての十分な経験をし、呼吸器専門医試験に合格すると専門医が取得できます。おおよそ卒後6〜7年で呼吸器内科の専門医を取得するのが通常です。

学位、専門医取得後、多くの医局員は大学のスタッフ、附属病院、関連病院の責任者を目指します。数は少ないですが研究者として邁進する医局員もいます。学位、専門医取得後、開業する医局員もおり、卒後10年目以降の進路も多彩です。本人の希望にあった形で様々なキャリア形成のために医局は支援します。

3.女性のキャリアパス

当教室では女性医師のライフステージを非常に重要視しています。入局される女性医師は26歳ぐらいの方が多いですが、その後専門医資格取得や大学院進学をすると30歳を迎え、結婚や出産といったライフイベントを経験する方も多くなります。

またそうした時期に差し掛かった時に、住居の場所、家族などの支援が得られるかなどは人によって大きく違います。こうしたそれぞれの背景をくみ取りつつ、個々の状況に合わせた柔軟な対応が、女性医師のキャリア形成には必要です。

当教室では、そうした女性医師の方々に様々なキャリアパスを整えています。

臨床中心

バリバリ型 結婚や出産を経験してもすぐ病棟外来へと復帰するパターン。

当直は本人と相談の上、免除できる体制がある。

外来担当型 外来のみ対応する形で、臨床に尽力する。

関連病院型 関連病院に勤め、しっかりと働く。

研究・教育中心

研究型  大学院の研究室で、研究に携わる。

教育型  医学生、研修医や大学院生の教育に関わる。

このようなたくさんの道が用意されています。活躍する場を個々のニーズに合わせて選ぶことで、それぞれが無理のない範囲で働き続けることを目指しています。

4.関連病院

順天堂大学には本院以外にもいくつかの附属病院が存在します。本院を中心として附属病院は6つあり、それぞれに教室員を数多く派遣しています。そして附属病院以外にも関連病院が多数あり、数多くの活躍の場が用意されています。

【医局員派遣先附属病院】

  • 順天堂静岡病院
  • 順天堂浦安病院
  • 順天堂東京江東高齢者医療センター
  • 順天堂練馬病院

【関連病院】

  • 江東病院
  • 越谷市立病院
  • 東部地域病院
  • 済生会川口総合病院

【国内留学先】

  • 千葉大学真菌医学研究センター
  • 国立がん研究センター
  • 慶應義塾大学先端医学研究所
  • 東京大学大学院医学研究科生化学分子生物学分野
  • がん研究会有明病院

5.留学

当教室は留学を奨励しており、今年は2名が留学しています

*現在留学中

【留学実績】

  • National Institutes of Health (Besesthda, USA)
  • McGill University (Montreal, Canada)
  • University of Colorado (Denver, USA)
  • National Jewish Health Pulm/Crit Care Med (Denver, USA)
  • University of British Columbia (Vancouver, Canada)
  • University of Nebraska (Omaha, USA)
  • University of Sydney (Sydney, Australia)
  • University of Toronto (Toronto, Canada)
  • University of Washington (Seattle, USA)
  • Massachusetts General Hospital (Boston, USA)
  • Children's Hospital (Boston, USA)
  • Royal Melbourne Hospital (Victoria, Australia)
  • Hammersmith Hospital (London, UK)
  • German Cancer Research Center (Heidelberg, Germany)
  • University of Nottingham (Nottingham, UK)
  • University of South Alabama (Alabama, USA)
  • University of South Chicago (Chicago, USA)
  • Ohio State University (Chicago, USA)
  • University of Michigan (Michigan, USA)
  • Hospital for Sick Children, Peter Gilgan Centre (Toronto, Canada)

医局の構成

所属医師 約60名(教授:1 名、先任准教授:2 名、准教授:7 名、助教:6 名、助手1名、医員:15名、後期研修医:7 名、大学院生:26名、研究生:1 名)
専門医

日本内科学会内科専門医11名
日本呼吸器学会呼吸器専門医19名
日本アレルギー学会アレルギー専門医4名
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医6名
日本老年医学会老年病専門医2名
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医1名
がん治療認定医8名 ほか

男女比

7:3

所属医師の
主な出身大学

順天堂大学、東京慈恵会医科大学、東邦大学、杏林大学、聖マリアンナ医科大学 、獨協大学、東海大学、帝京大学、東京医科大学、埼玉医科大学、東京女子医科大学、昭和大学、北海道大学、旭川医科大学、岩手医科大学、東北大学、秋田大学、山形大学、福島県立医科大学、筑波大学、横浜市立大学、新潟大学、群馬大学、信州大学、山梨大学、大阪市立大学、神戸大学、浜松医科大学、岡山大学、川崎医科大学、島根大学、香川大学、高知大学、九州大学、宮崎大学、熊本大学、大分大学 など

同大学出身者と
他大学出身者の比率

5:5

教室員の総人数は、産休育休中の医師、留学中の医師などすべてを含め約120名です。順天堂大学は本院である順天堂大学医学部附属順天堂医院のほかにもいくつかの附属病院があります。また附属病院以外にも数多くの関連病院があり、教室員を出向させています。

当教室(本院)のみの人数は約60名で、構成は以下のとおりです。

  • 教授   :1 名
  • 先任准教授:2 名
  • 准教授  :7 名
  • 助教   :6 名
  • 助手   :1 名
  • 医員   :15 名
  • 後期研修医:7 名
  • 大学院生 :26 名
  • 研究生  :1 名

また、当教室には上記以外に6名の外国人留学生が在籍しています。文部科学省からの支援もあり留学生を受け入れる動きが活発になっています。現在はインドネシアからの留学生が3名、いずれも大学院に進学しています。また中国からの留学生も3名おり、そのうち修士課程大学院生が1名、博士研究員(ポスドク)が1名です。

男女比

当教室は30%が女性で女性の割合は多いといえます。

呼吸器内科という分野が、女性のライフイベントに対応しやすい領域かというと難しい部分があるかもしれません。当教室は重症の患者さん、呼吸不全になり人工呼吸を装着することになるケースがある急性疾患の患者さんが多くいらっしゃいます。また肺がんの終末期の患者さんも多く、緊急で病棟に呼ばれるケースもあります。そのため呼吸器内科は決して楽な診療分野ではありません。

しかし呼吸器疾患にやりがいを感じている女性医師が多く、教室員全体の約1/3を占めているというのが現状です。当教室ではこうした女性医師のために働きやすい環境を整えられるように努めています。

出身大学

教室員の出身大学をみてみると、約50%が順天堂の卒業生、約30%が私立医科大学、約20%が国公立大学となっています。

【私立大学】

  • 順天堂大学
  • 東京慈恵会医科大学
  • 東邦大学
  • 杏林大学
  • 聖マリアンナ医科大学 
  • 獨協大学
  • 東海大学
  • 北里大学
  • 帝京大学
  • 東京医科大学
  • 埼玉医科大学
  • 東京女子医科大学
  • 昭和大学
  • 岩手医科大学
  • 川崎医科大学

など多数

【国公立大学】

  • 北海道大学
  • 旭川医科大学
  • 東北大学
  • 秋田大学
  • 山形大学
  • 福島県立医科大学
  • 筑波大学
  • 横浜市立大学
  • 新潟大学
  • 群馬大学
  • 信州大学
  • 山梨大学
  • 大阪市立大学
  • 神戸大学
  • 浜松医科大学
  • 岡山大学
  • 島根大学
  • 香川大学
  • 高知大学
  • 九州大学
  • 宮崎大学
  • 熊本大学
  • 大分大学 など

こうした出身大学の例を並べてみてみれば、当教室がいかに学閥を廃止し、意見を交換することを重要視しているかがお分かりいただけるかと思います。

平成30年度の入局者の構成

今年の入局者は11名でした。そのうち内部からの入局者が7名、外部からの入局者が4名で、外部バランスよく入局しているといえると思います。

初期研修先の内訳をみてみると、今年は2名が順天堂浦安病院、1名が順天堂練馬病院でした。また、外部からの方は虎の門病院、東京医療センター、川崎医科大学、松戸市立病院でした。

また入局者の男女比は、今年は7名が男性、4名が女性、去年は男性が8名、女性が1名という実績でした。

研修生へのメッセージ

私は一人ひとりの教室員を自分の家族のように思っています。自分の子どもに対して親が道を示すがごとく、これらの3つのコンセプトのもと、教室員の様々な状況に応じたキャリアパスを示していきたいと思っています。是非、一緒に学び呼吸器病学の面白さ、奥深さを感じ取り、悩める患者さんにとっての福音となるような仕事をしましょう。そして世界初の最先端研究成果を世界に発信しましょう。Number oneとOnly one両方を目指します。
あなたの入局を心から歓迎します。

この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生

順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長(呼吸器内科 教授)

髙橋 和久 先生

1985年順天堂大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院 内科臨床研修医、順天堂大学医学部呼吸器内科学専攻生となり、呼吸器内科学を専門とする。1994年に米国へ渡り、米国ハーバード大学医学部附属マサチューセッツ総合病院 腫瘍外科学留学ポスドクとなり、帰国後は順天堂大学医学部呼吸器内科学に所属し、助手、医局長講師、助教授を経て2005年より同科の教授に就任。また2014年からは順天堂大学医学部附属順天堂医院の副院長、GCPセンター長、臨床研究支援センター長などをつとめる。呼吸器系疾患を幅広く診療する呼吸器内科のスペシャリストであり、特に肺がん内科治療を専門とする。また研究面では主に呼吸器疾患の診断と治療、呼吸器悪性腫瘍病態解明、新規治療薬開発に取り組む。