公開日 2019年01月30日 | 更新日 2019年01月30日
名古屋市立大学医学研究科視覚科学
名古屋市立大学眼科の代名詞、網膜硝子体疾患
当教室では網膜硝子体疾患の臨床と研究を中心に行っています。教授が網膜・硝子体疾患の専門家であるため、当分野においては日本でもトップクラスの研究・臨床を行える教室です。
具体的な疾患としては特に加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症に対する診断、治療(薬物療法、網膜光凝固術、硝子体手術)を専門としており、薬物治療が主流になりつつある眼科疾患でも、患者さんの病態によっては積極的に手術を行います。網膜剥離、黄斑円孔、網膜前膜に対する硝子体手術は全国的にも症例数が多く、当教室での年間手術件数は約1,200件、網膜硝子体手術全体の症例数は約450件に上ります。
網膜硝子体疾患を専門とする当教室ですが、緑内障手術も多く行っているのがもう一つの特徴です。緑内障手術は年間150件ほどの症例数があり、近年主流となっているチューブシャント術も施行しています。
最先端の医療技術を経験できる、そしてそれを理解する
名古屋市立大学病院では常に最新の診断機器・治療機器を導入するなど、最先端の医療技術を経験できるチャンスがあります。診断機器は医療技術の発展とともに日々進歩し機能拡張を遂げているため、ともすれば機械の診断に頼ってしまいがちです。また機械からの情報を鵜呑みにしてどのようなメカニズムかを理解していないと、思わぬ落とし穴に落ちることもあります。そうならないためにも研修医の方々には、新しい機器にたくさん触れて、機械に使われるのではなく機械を使いこなす医師になってほしいと考えています。当教室では市販前のプロトタイプの機器が一時的に設置されることがあり、新しい知見をいち早く得られるだけでなく、機械をより深く知ることができます。
医局情報
診療科 | 眼科 |
---|---|
専門分野 | 網膜硝子体疾患 |
症例・ 手術数 |
年間手術件数は約1,200件、網膜硝子体手術全体の症例数は約450件、緑内障手術は年間150件ほど |
関連病院 |
当院 関連病院 |
名古屋市立大学眼科にしかめ面は似合わない。助け合いの精神で動く教室
見学に訪れた方々からは、「非常に仲が良い医局」という感想を多々いただきます。実際に当教室は教室員の仲がとても良く、助け合いの精神のもとでお互いに支えあいながら楽しく仕事をしています。日々の業務はそれぞれの立場や職種に応じて分担しますが、業務の際わからないことや困ったことがあったときは必ず上司がフォローに入ります。
また当教室はトップダウン方式ではなく、若手医師から教授まで全員が一緒になり考えることで知識の向上を目指すというスタンスをとっています。そのため、若手医師の方々にも、術前カンファレンスなど日常的な場面で各自の疑問や意見を積極的に発言していただきます。若いという理由だけで研修医の発言機会を奪うようなことは決してありませんから、ぜひ自発的に物事を考え、教室全体に発信していってほしいと思います。
楽しく学び、楽しく仕事をする。オフタイムも充実
「家庭で過ごす時間やオフタイムが充実しているからこそ、生き生きと働くことができる。」こうした考えのもと、医局旅行からボジョレー解禁祝賀会、スイーツマラソン、屋形船体験など、教室全体で様々なイベントを開催して楽しんでいます。毎年恒例の日間賀島医局旅行では、愛知県知多半島の先、三河湾に浮かぶ日間賀島で絶品のタコとフグを使った会席料理に舌鼓をうち、カラオケ大会で盛り上がり、高級ワインとチーズを嗜みながら夜が明けるまで語り合いました。
△医局旅行の様子
Facebookページ:https://www.facebook.com/ncuganka/
また節度を守れば、休日回診やイベントに子どもや家族を連れてきても、全く問題ありません。教室員はそれぞれの家庭を大事にしており、医局では日常的に各家庭の話がよく飛び交います。
△イベントの様子①
△イベントの様子②
2018年現在、空前のベビーブームが巻き起こっており、2017年~2018年にかけて関連病院所属の医師を含め10名近い医師が出産しました。男性医師の家庭にも次々と子どもが誕生しています。大学医局内でこれほどの出産ラッシュが起こる現象は珍しいかもしれません。もちろん、一定期間の育休後、希望者は順次育休から復帰しており、2019年春には7人が短時間勤務の常勤医として復帰予定です。
教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)
1.研修の流れ
研修施設は大きく2つに分けられます。都市部にある常勤医が2~4人の基幹病院(名古屋市西部医療センター、東部医療センター、大同病院、豊田厚生病院など)と常勤医が2~3人の地方の中核病院(蒲郡市民病院、菰野厚生病院、大垣徳州会病院、稲沢厚生病院、木沢記念病院など)です。それぞれの病院には特色があり、複数の病院で研修をすることで、あらゆる面に対応できるような臨床医としての能力を磨きます。各病院には、この地域の眼科といえば○○先生と言われるような、経験豊富な指導医がおり、しっかりと研修医をサポートしてくれるため、研修医は安心して学ぶことができます。
2.学位・専門医ともにスムーズに取得できる
当教室には経験と実績豊富な指導教官が多数おり、その下で研究を続けることでスムーズな学位取得を目指します。また専門医においても大学での研修期間中に論文一報を作成し、同時並行で大学や市中病院で臨床経験を積むという教育フローが確立されているため、問題なく取得できます。
試験前になると、同期同士で助け合いながら猛勉強している姿が局内でよくみられ、切磋琢磨する様子をうかがい知ることができます。
3.若手の頃から手術を任せてもらえる
「習うより慣れよ」何事も経験が大事
当教室では、後期研修1年目のうちに白内障手術を部分的に執刀、そして大学研修が終わるまでに完投(最初から最後まで執刀する)できるレベルを目指した指導が行われており、実際に、毎年多くの医師がこの目標を達成しています。後期研修2年目以降は関連病院に赴任しますので、白内障に加えて緑内障、硝子体手術のトレーニングも積むことができます。専門医を取得する頃には、多くの医師が白内障のみならずその他の手術も執刀できるようになります。
もちろん、最初から患者さんの執刀を任せることはしません。まずは豚の眼などを利用して、手術の練習を積み重ねてもらいます。練習の際には関連病院の医師や大学の先輩スタッフなどが丁寧に指導しますので、着実に技術を磨くことができます。
4.論文掲載の実績
2016年度の実績は下記の通りです。
●英文ジャーナル Invest Ophthalmol Vis Sci, Am J Ophthalmol など18報(2011~2016年でPub medに登録された雑誌への掲載計53報)
●邦文ジャーナル 日眼会誌、臨床眼科など原著論文5報(2011~2016年で医中誌に登録された雑誌への原著論文35報)
△第70回日本臨床眼科学会にて
5.研究環境は?
大学院生にとって、研究に集中できる環境が整っています。大学に所属する大学院生はもちろん、関連病院に勤務している先生も研究日制度を活用して週に1日の研究日が確保されます。最近では病院の規模を問わず、一定の手続きをすれば研究や研修を勤務時間内に行うことを認めている施設が多いのですが、実際に制度が活用されている施設はそれほど多くありません。また実際に平日に病院勤務をしないとなると、他の医師の負担が増えることもあります。しかしそこは当教室自慢の「助け合い」精神で、お互いにカバーしあいます。
実際には大学院生=若い医師、勤務先の相棒=年長の部長ですから、部長の計らいで大学院生は研究がじっくり研究できるのです。
6.研究内容
1つの研究グループは2名以上の大学院生と助教、講師以上の指導教官で構成されています。指導教官以外に中堅の医師を配置しており、大学院生は気軽に研究のノウハウや実験の仕方などを質問できる環境だといえます。
基礎研究
どのグループも教室の専門である、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症の病態解明および治療薬の開発に関する研究を行っています。動物を使った実験もあれば培養細胞を使った実験もあります。
安川力准教授グループ:培養した網膜色素上皮細胞を使った研究、ウサギなどの動物を使った研究
- 網膜色素上皮の生理機能の解明
- 加齢黄斑変性の病態解明
- 網膜硝子体疾患に対するドラッグデリバリーシステムの開発(どうやって薬物を効率よく、長期的に作用させるか)
野崎実穂講師グループ
- マウスのレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを使った研究
- 加齢黄斑変性の分子生物学的なアプローチによる発症機序解明
- 新規治療法の開発
平野佳男講師グループ
- マウスのレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを使った研究
- 光傷害モデル、網膜静脈閉塞症モデルを使った研究
- 分子メカニズムの解明
- 新規治療法の開発
網膜血管生物学寄附講座、植村明嘉教授グループ
- 独自に開発した糖尿病網膜症モデルマウスを使った研究
- 網膜の浮腫・血管新生にかかわる分子機構の解明
- 新たな創薬コンセプトの確立
- さまざまな新薬の薬効評価
臨床研究
近年、網膜光干渉断層計(OCT)がめざましい発展を遂げており、特にここ数年は血管を描出できるモードOCT angiography (OCTA)が注目を集めています。当教室はいち早くOCTAに着目し、網膜硝子体疾患の早期発見を念頭に以前から使用を続けており、すでにその業績は論文として発表されています。なおOCTの読影に用いる人工知能の研究も併せて進行中です。このように当教室では、臨床研究も積極的に行います。
7.留学先、留学実績
若手医師の留学を強く推奨。教授やリーダーが丁寧にサポート
当教室は若手医師の留学を推奨しており、留学希望先の長にも積極的に推薦して留学を後押しします。これまでの留学先としてはアメリカが多いのですが、本人の希望があれば国内留学も問題ありません。また、「特別希望地はないがとにかく海外留学をしてみたい」という方には、教授やグループリーダーの知り合いの研究者のラボを紹介します。
実際に教室員が留学したことのある大学
- ケンタッキー大学(アメリカ)
- ハーバード大学(アメリカ)
- ライプチヒ大学(ドイツ)
- バージニア大学(アメリカ)
- フロリダ大学(アメリカ)
- ロンドン大学(イギリス)
8.将来のキャリアパスは?
当教室では網膜硝子体疾患を中心に学びますが、将来的なキャリアの選択は各教室員の自由です。
たとえば研究に専念したい方に対しては、眼科専門医取得に必須である大学での研修後、関連病院で眼科臨床医として必要なある程度の知識を身につけた後に大学院で研究、さらに留学して基礎研究を行う、帰国後大学に戻ってさらに研究を続ける、という道がスムーズに開けるように支援します。一方、臨床のスペシャリストになりたい方には、関連病院や大学で着実に臨床経験を積んだのち、関連病院の部長に推薦することも可能です。
また、当教室では子育てをしながら働きたい女性医師のキャリア支援も積極的に行っています。この場合は、育休取得後に、希望があれば非常勤医師として復帰し、その後常勤医師で復帰します。専門医取得前の場合には早期の常勤復帰をサポートし、専門医を取得したのち手術も行う常勤医をめざします。女性医師が復帰後も生き生きと働ける居場所と環境を用意しているので、出産を希望される女性医師も安心して入局していただきたいと思っています。
医局の構成
所属医師 | 21名の常勤医師と5名の非常勤医師が在籍 |
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専門医 | 14名(うち8名指導医) |
男女比 | 13:8(常勤)非常勤は全て女性医師 |
所属医師の 主な出身大学 |
東京医科歯科大学、日本大学、日本医科大学、北里大学、東海大学、順天堂大学、昭和大学、帝京大学、山梨大学、山形大学、大阪医科大学、近畿大学、川崎医科大学、滋賀医科大学、愛媛大学、徳島大学、香川大学、山口大学、高知大学、琉球大学、三重大学、岐阜大学、浜松医科大学、福井大学、富山大学、金沢医科大学、愛知医科大学、藤田保健衛生大学、信州大学など |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
同:他 = 12:9 |
入局者の特徴と数
当教室には20名の常勤医師と7名の非常勤医師が在籍し、関連病院にも計38名の当教室所属スタッフが赴任しています。シニアレジデントは現在12名、 関連病院合わせて、産休・育休中の女性医師は7名います。名古屋市立大学のみならず他大学からの入局者が多く、名古屋近隣のほか関東圏・関西圏を主とした全国の大学から多くの入局希望者が集まります。
卒業大学
関東圏:東京医科歯科大学、日本大学、日本医科大学、北里大学、東海大学、順天堂大学、昭和大学、帝京大学、山梨大学、山形大学など
関西圏:大阪医科大学、近畿大学、川崎医科大学、滋賀医科大学、愛媛大学、徳島大学、香川大学、山口大学、高知大学、琉球大学など
近隣:三重大学、岐阜大学、浜松医科大学、福井大学、富山大学、金沢医科大学、愛知医科大学、藤田保健衛生大学、信州大学
眼科(網膜硝子体疾患)という学問そのものの魅力だけでなく、当教室の和気あいあいとした雰囲気に一目惚れして入局した者も少なくありません。
研修生へのメッセージ
住所:愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1
電話:052-851-5511
公式HP:http://w3hosp.med.nagoya-cu.ac.jp/
メディカルノートで病院詳細を見るこの医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
名古屋市立大学病院 病院長 名古屋市立大学病院 眼科 部長 名古屋市立大学大学院医学研究科 視覚科学分野 教授 名古屋市立大学 理事
小椋 祐一郎 先生
日本における黄斑疾患の名医。糖尿病網膜症や加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症などの網膜硝子体疾患をはじめ、白内障や緑内障などの幅広い眼疾患の治療研究に携わる。日本網膜硝子体学会の理事長、日本糖尿病眼学会の理事などを務めており、糖尿病患者の早期眼科受診の重要性を周知するために尽力している。最近の関心事はワインと料理、フライフィッシング。