公開日 2018年11月29日 | 更新日 2018年11月29日
東北大学緩和医療科
医局の概要
東北大学大学院医学研究科緩和医療学分野は、教授1名、スタッフ5名、大学院生1名、研究生1名の計8名が在籍する小さな教室です。それでも2015年に私が教授就任をした当初はわずか3名の所帯でしたから、少しずつですが確実に仲間が増えてきています。
当教室の専門分野は緩和医療ですが、緩和医療という分野がカバーする範囲は多岐にわたっており、どの診療科の先生にも知っておいていただきたい医療であると考えています。ですから当教室では、緩和医療をじっくりと学びたい方はもちろん、短期間で緩和医療の基礎を学びたいという方にも門戸を開いています。
医局情報
診療科 | 緩和ケア科 |
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専門分野 | 緩和医療 |
症例・ 手術数 |
年間600例(外来、緩和ケアチーム、緩和ケア病棟で対応) |
関連病院 |
当院 関連病院 |
教室の魅力
全国トップレベルの緩和医療体制が整う東北大学で多種多様な研修を受けられる
東北大学は、かねてより全国に先駆けて緩和ケアに力を入れています。大学病院内に緩和ケア病棟が設けられているので、当教室の教室員は大学病院内で豊富な臨床経験を積むことができます。東北大学のように大学病院内で緩和ケア病棟を有している国公立大学はほとんどありません。また当教室では研究にも重きを置いているので、研究活動も積極的に取り組んでいます。
当教室は少人数ではありますが、大学病院としてのしっかりとした教育体制のもと、臨床・研究を両方とも学ぶことができます。
教育体制・キャリアパス(専門医及び学位の取得)
1.研修の例
3か月の短期研修から4年間の研究生活まで
前述のように当教室の研修プログラムは、大学院での4年間の長期学習から3~6か月の短期研修まで様々です。研修中は本人の希望に応じて、腫瘍内科や放射線治療科、在宅医療といった他分野にもローテートをしていただくことができます。
3か月研修では何をどのくらい学ぶ?
入局した教室員は、まずは病棟の診療グループに所属して常時10名前後の患者さんを受け持ちますし、他のグループの患者さんの臨床経過についても定期的なカンファレンスで学べますので、3か月という短期研修であっても、しっかりと努力をすれば緩和医療の基本はほとんど身につきます。どの診療科に所属している医師でも、緩和ケアの分野を学ぶことは、その後の医師人生に必ず役立つはずです。当教室は緩和医療専門医になりたい方だけではなく、ご自身の専門領域に緩和ケアを取り入れたい方にも積極的に門戸を開いています。
大学院生が4年間で学ぶことは?
大学院生は今後の日本の緩和医療の担い手であるため、4年間をかけてじっくりと研究にも取り組んでいただきます。現在、緩和医療領域では非常に大規模な調査研究を行っており、当教室の大学院生もその大規模研究を学位のテーマに設定して研究を進めてもらっています。
もちろん、研究と同時に、大学病院の緩和ケア病棟で十分な臨床経験も積んでいただくので、学位とともに学会が認定する専門医の資格も得ることが可能です。
大学院生の研修の流れ
1年目は緩和医療科に慣れてもらうことが第一で、主に臨床を通じて緩和医療のあり方を学びます。そのなかで各自の研究テーマを、教授と話し合いながら決めていきます。場合によっては1年目から研究を始めることもあります。
2年目からは本格的に研究をスタートし、1年間を通じてデータ採集を行います。3年目に結果を解析し、論文執筆のための準備を整えます。4年目で論文を完成させ、論文投稿と併せて学位取得を目指します。
また、臨床に関しては1年次より継続的に行い、専門医取得に向けて臨床能力を高めていきます。
なお、現在在籍する大学院2年生は、実際に先述の全国規模の緩和医療に関する調査に参加しており、これを学位のテーマに設定し研究に励んでいます。
全国規模の調査であるため、この研究では何千人もの方のデータが対象になります。この調査は各地で分担されて行われるため、我々が扱うのはそのうち一部のテーマですが、大学院生の頃からこれほど大規模な研究に携われることは大きな魅力といえます。
また研究を通じて、緩和医療の分野でご高名な先生方とも、様々な会合などで交流できるので、将来的な留学その他の活動につながるネットワークを築くチャンスも多数あります。
2.論文・研究実績
2015年に一新されたばかりの当教室は、これから多くの業績を伸ばしていきたいと考えます(※井上先生個人の業績はプロフィールを参照ください)。日本でも全国的に緩和ケアの研究が活性化しつつありますが、当教室は東京の国立がん研究センターが中心となっている研究グループ(J-SUPPORT)に幹部施設として名を連ねています。2017年現在はまだ目立った実績がありませんが、教室員一同研究への努力を重ねているので、今後は大きく業績を伸ばしていくでしょう。
3.留学
希望者にはアメリカやオーストラリアなどの施設を紹介しています。ただし、緩和医療の場合は世界各国で医療制度が異なるため、他国で学んだことがそのまま日本に通用するとは限りません。ですから当教室は、海外留学だけではなく国内で質の高い緩和医療を行っている施設への国内留学を推進しています。
国内留学先としては、国立がん研究センター東病院や聖隷三方原病院など、緩和医療の分野で多数の実績を持つ病院があります。
4.キャリアパス
大学での研究や病院での臨床はもちろん、在宅医療の道に進むことも可能
緩和医療は広範囲をカバーする分野であるため、そのキャリアパスも多岐にわたります。
たとえば当教室の場合、私のように大学に残って緩和医療の研究を続けるパターン以外に、市中病院の緩和ケア病棟で活躍したり、在宅医療の領域で活躍している先輩医師がいます。東北大学病院のある仙台市は、政令指定都市のなかで最も在宅医療が進歩している都市といわれており、在宅での看取り率はトップにのぼります。当教室は、実際に仙台で在宅医療を行っている多くの医療機関とも連携しているため、在宅医療への道に進むことも可能なのです。
医局の構成
所属医師 | 教授1名、スタッフ5名、大学院生1名、研究生1名の計8名 |
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専門医 | 緩和医療専門医1名
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男女比 | 5:3 |
所属医師の 主な出身大学 |
秋田大学、東北大学、山形大学、関西医科大学、弘前大学、琉球大学など |
同大学出身者と 他大学出身者の比率 |
東北大2:他大学6 |
多様性を重んじた教室には個性あふれるメンバーが集う
当教室の最大の特徴は、緩和医療とは別の専門を持つスタッフが集結している点にあります。一般の診療科や教室の場合、その教室の専門分野を集中的に学びたい研修医が入局することが多いのですが、緩和医療の場合は必ずしも緩和医療だけを専門にする必要はありません。さまざまな専門分野で数年間実績を積んでから、緩和ケアを学びたくなった方がこの教室に移ってくることも多くあります。教授である私自身も、元は肺がんを専門にしていましたが、より緩和ケアに軸足を置きたいと思い立ち、この分野に足を踏み入れた医師の一人です。私以外の教室員も、外科、血液がん専門医、腫瘍内科、呼吸器内科、小児科など様々なバックグラウンドを持った方が集まっています。
もちろん、最初から緩和ケアを専門にしたいと考える若手医師の入局も大歓迎です。実際に現在当教室にいる大学院生は、早い段階から緩和ケアを専門にしたいと入局してくれました。バラエティーに富んだメンバーが集い、多様性を受け入れる文化の教室といえます。
出身大学は様々。女性も働きやすい
教室員の出身大学は秋田大学、東北大学、山形大学、関西医科大学、弘前大学、琉球大学など、東北地方を中心に各地からメンバーが集まっています。男女の割合は男性が6名、女性が3名で現状としては男性の数が多いのですが、緩和医療は身体的負担の面で女性にとっても働きやすい領域であるため、今後女性の割合が増えていくと予想します。
当教室には現在0歳のお子さんを育児中の女性医師もいます。女性医師が育児と仕事を両立してもらえるよう、当直免除など教室としての体制をしっかり整えており、今後も女性医師にとって働きやすい教室になるような工夫を取り入れていく予定です。
研修生へのメッセージ
この医局の情報をインタビューさせて頂いた先生
東北大学 大学院医学系研究科緩和医療学分野 教授
井上 彰 先生
秋田大学を卒業後、国立がんセンター、東北大学病院呼吸器内科などを経て、東北大学病院緩和医療科教授。肺がん治療と緩和医療という2つの専門分野を持ち、病気の治療と緩和ケアの双方から患者さんを診療する。肺がんの患者さんを数多く診療してきた経験を活かし、緩和ケアをすべての診療科に広めていきたいという思いで日々活躍している。